Professional CFO Interview
(日本企業成長投資投資先)湯快リゾート株式会社
CFO
2008年3月 神戸大学経済学部経済学科卒業
2008年4月 住友商事株式会社入社
2019年7月 株式会社エスネットワークス入社
2020年3月 (日本企業成長投資投資先)湯快リゾート株式会社入社 CFOを務める
※インタビュー時点(2023年6月時点)での内容となります。
大学卒業後、住友商事へ入社し経理部に配属。約11年所属しましたが、期間中は主に営業部門担当の経理業務を担当していました。また住友商事所属中には南アフリカへの駐在も経験し、現地での財務経理や一部人事総務に関する業務も経験することが出来ました。
同社退職後は財務・経理分野のコンサルティングファームへ転職し、主にPEファンド投資先のPMIサポートに関する業務を担当した後、現職へと転職しました。
仕事をする上で意識していた点は、大きく3点ありまして、考えていたことはごく当たり前のことなのかもしれませんが、今でも仕事を進める上での基本動作になっていると思っています。
・各業務のフローをただ覚えるのではなく、理由・背景を把握し、必ず押さえるべきポイントを理解すること
・インハウスのプロフェッショナル人材として、自身の担当しているビジネスについての構造や収益を生み出すポイントなどを確りと理解すること
・(会計分野が専門外の方など向けに)専門分野の説明をする際には、なるべく平易な分かり易い説明とすべく、ポイントを整理すること
元々、特別に会計やファイナンス関連の知識知見があったわけではなく、住友商事での業務にて初めて触れたので、学生の時代からCFOというものを意識していたわけではありませんが、家業などの関係で会社経営というものは少し身近に存在しており、漠然と会社経営に関する仕事に関わりたいとは思っていたと思います。
その中で財務経理のキャリアを経たことでCFOとしてのキャリアを意識するようになったと思います。特に入社6~8年目の海外にいたときですかね。本社にいた際は専門性を高めようと思っていた部分が、海外に行くとポジションが1個上になりました。
個別論点でゴリゴリやるというよりマネージする側になったのもちょうどその時ぐらいかもしれないです。
CFOを意識してからも特別な準備などはしていないのですが、自身のキャリアでの経験を棚卸し、自身がCFOとして働くことを想定した上で不足すると思われるスキルや経験は何か、それを補うためには何をすべきかということを整理しました。私の場合はそれが管理会計面(特にFP&A)だったため、自身で書籍を読み漁り、先輩や同業他社の方に確認しながら関連する情報収集や勝手に想定する会社ではこういう分析が必要かもしれないみたいなイメージをしていました。
実は現職はコンサルタント時代の担当クライアントなのですが、担当期間中にCFOの方が退職されてしまい、ポジションが空白となりました。コンサルタントへの転職時には将来のCFO職について意識しており、自身の目の前に挑戦できるチャンスがあるのであれば、早いタイミングで挑戦したいと思い、自ら手を挙げて入社を志願させて頂きました。結果的にファンドの方や会社マネジメント、前職(特にわがままを受け入れて頂き、ご迷惑をおかけしました)に挑戦を認めて頂き、入社に至りました。
大きく2点あるかなと思っています。
1点目が、グループ利益最大化のために事業会社にいながら、投資先の経営課題に複数部署を巻き込みながらも関与していく必要があるという点ではないかと思います。
課題解決のTo Beに対して、実際のエクゼキューションを想定した場合の落とし所を探りながら複数部署の意見集約をしていくという経験は総合商社では実際に経験する機会が多く、PE投資先の企業内では特に経営システムの変更や改善をどんどん進めていく必要がありますので、どうやったら推し進めることが出来るのかを考え、実行できるポイントの擦り合わせを実施していくといった経験は重要だと思っています。
2点目が、コミュニケーションの分かり易さだと思います。総合商社時代は業務を推進する上でのステークホルダーがかなり多く、且つ専門的な説明が必要な場面も多々あることから、説明はなるべく平易に行う必要がありました。現職でも同様のスタイルを継続したことで同じ理解に基づいた意思決定が出来たと思っています。
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コミットメントの差はあると思います。やはり総合商社の場合、単年度予算は追いかける一方、キャッシュフローまで含めた形で、コミットメントもできるかというと差があると感じます。もちろんそういう方もいらっしゃるとは思うのですが、ファンドさんのところはある意味そこで失敗すればトラックレコードが残りLPも集まらないとか、自身の報酬とかにすごく影響するというところがある。ミッドターム3~5年で経営改善に対する本気度というのは、やはり温度感として差はあるのではないかと感じます。商社の場合自分たちのルールにより忠実に沿って進めていくところはありますが、これはファンドさんのカラーにもよるかもしれないですが、アプローチは違えど最終的に結果が出ていけば、やり方はおまかせしますという形で柔軟に対応いただけたかなと思っています。
CFOのポジションは本当にタイミングが良かったと思っています。
そのポジションを何とか務められたのは以下の3つのポイントだと思います。
① 自分の軸を確りと持って自身の意見を明確に伝えること
② 定量化出来る場合は数値的根拠を持つこと
③ NOの場合でも、その理由、どういったポイントをクリアすればOKとなるか明確にすること
特にCFOは財務面を管理していることから、会社経営面での意思決定における発言については影響力が大きくなりがちだと思います。だからこそ意見に対する根拠や検討経緯や理由説明は丁寧に、且つ明確に伝達する責任があると思います。
初期の段階でいうと数値目標でどうしても折り合いがつかない部分も有り、その際、現実感のない数字を作ってしまうと、現場のやる気もなくなってしまう。そこの落としどころはどこかというコミュニケーションは丁寧に行うようにしていました。
To株主という観点では、現実的に積み上げてロジカルに説明していくしかないというところで、納得させるようなコミュニケーションは取る必要がありました。
私が所属した期間を通して考えると、株主さんに対して会社として抱えている問題などの事実はしっかりお伝えする。どういう人がどういうことを思っているかなど、会社は人が動かしてるので、もう少し人間模様じゃないですが、そういった部分もご理解いただくように心がけていました。特に私みたいな外部採用の人間と内部でマネジメントになってる方もいるので、その関係性ですね。その関係性で摩擦が起きたりはしがちだとは思うんですが、その辺りも含めてどういう状況か結構つまびらかに伝えるようにしていました。
逆方向の話で言うと、プロパーの方に対してはファイナンス関連、契約や知識等のハードスキル面などについては、かいつまんでわかりやすく説明をするように心がけていました。
教えてくださいというスタンスで取り組んでいました。特にホテル業は私も経験が無かったですし、初めてで不明点も多かったので、そこは素直に分からないので教えてくださいというスタンスでいきます。一方で、こちらから専門性やハードスキルの部分で提供できることはします。ある程度、この人はスキルセットが伴っていてなんか会社の事業を分かってくれそうというのは感じてもらわなきゃいけないと思う。ハードスキルとソフトスキルの使い分けな気がします。私の専門分野である一般的な会計・財務面で判断が出来る話もありますが、もう少しビジネスに突っ込んで行くと理解が出来ていない部分がやはりありました。そういった私が不明瞭な部分に関して投資先の社員の方々は感覚的に理解しているので、その感覚の部分をしっかり教えてもらって、それを実際の数字に落とし込むとこんな感じだよねみたいな、そういうコミュニケーションは最初のうちにしっかりやっておかないといけない。
最初は教えてくださいというスタンスで関係性を構築しつつも、早めにのタイミングでこの人ってビジネスに対する理解があるなというのも感じてもらわないといけないと思い、キャッチアップに対してはかなりスピード感をもって取り組んでいたと思います。
さらに次のステップにいくためには汗をかくことも大事かと思っています。特に私が入ってから予算の制度をガラッと変える機会が有りました。ファクトベースでしっかり経営推進していきましょうという体制に社長以下で方針として出している中で、予算も過去のファクトベースで作りましょうと言うのは簡単なんですが、実際やってみるとやはりやり方がわからない部分はある。ここはそういう方針を出した手前自分も頑張ろうということで、それこそ各部署と一日中、朝から晩までずっと会議室にいるのが1週間2週間続くみたいなことをひたすらやりました。そうすると、翌年度になると、一緒に手を動かしながら社員の方も学び、精度が向上していく。会社のメンバーの成長が見れるのは自身の仕事の成果が目に見えますし、やっていて凄くよかったなと感じますし、会社のメンバーも自身の成長を感じることができ、そこまで一緒に汗をかくことで信頼を勝ち取れた部分もあるかなと思います。一方で、あの人はすごく数字に細かいしうるさいから怖いなと思われることも多分あったと思います。
会社マネジメントの意見を尊重しつつ、会社の経営改善、業績向上に資する取組であれば尊重、賛同、支援頂けるという印象を持ちました。ファンド投資期間における会社成長のみに縛られることなく、会社として長期の成長に向けた取り組みについてもご理解いただき、支援して頂いたと感じています。例えば、現職ではブランディングの部分になると思います。短期的には収益貢献があるかは定かではないですが、会社の長期的成長というところをサポート頂いたと感じます。
加えて、投資先マネジメント陣とのコミュニケーションについては重要視されていると感じており、個々の成長についても後押し頂き私個人としては凄く成長できる機会を頂いたと思っています。具体的には、入社後2週間に1回CEO、ファンドのパートナーと担当の方3名で私のフォローアップも兼ねて機会を作っていただいた。またCEOも年に1回ファンド側から私のフィードバックを取って頂き、良かった点、要改善点を頂けとても有難く感じました。
ファンド投資先だからというのはあるかもしれませんが、特にCFOに情報が集まりやすく、それをどう料理するか自分の腕次第という点です。またLBOローン等でファイナンス契約を理解して、事業会社の数字含めた数字コントロールをしなきゃいけないという、がんじがらめの中で泳げるとこはどこだろうと探す点です。それを自身が理解しているというちょっと特別な感じはあるのかなという気はしています。
20年の3月に入社し、コロナ渦で全館休業になった際の資金繰りです。そのときにどう乗り越えたかというと、これまさにマネジメントのチームワークでしかないと思っています。
ただ、そこには情報の非対称性があってはいけない。そこで2年分ぐらいの資金繰り予測を作り込んで、5月全館休館したらこれぐらいのお金が減っています、このまま続くと、もうここで資金ショートしますというところまではっきり伝えました。そのためには、コスト削減を含めてみんなである程度の痛みも伴う必要がありますよと。例えばボーナスをなくすだとか、リストラを実施しなくてはいけない状況になるかもしれないと。ただ、そこはしたくないので、まずはできることで、みんなでコスト削減のできるところをやっていこうとか、休業して仕事がなくなってしまいますが休業補償でお休みいただく方等含め理解をみんなで得るためにしっかり動いていこうだとか。乗り越えるためにはある程度情報は隠してはいけないと感じました。
マネジメントに隠すことなく会社の財務状況をすべてこうなってますと伝えるのがファーストステップだったと思っていて、その次にレンダーさんでした。特にレンダーさんとのコミュニケーションは苦労しました。レンダーさんに、こういう状況なんでもう支えてくださいって話をしなくてはいけないのですが、我々はもう会社でできることはこういうことがあって、これぐらいまで会社としてコストを削ります。一方で、コロナが収束することは絶対収束するとは思うんですが、そのタイミングで元に戻れない会社になっちゃいけないっていうのが重要なポイントかと思っていて、元に戻るために人は絶対残したいですと、あるいは施設売却するなんてもってのほかというところで、収益基盤はしっかり残させてください、ただその範囲内で削れる部分は削ります、それを仮にやってアフターコロナだったらこういう数字出しますという、将来計画の作成だったり、全社的なコスト削減プロジェクト計画を短期的に情報を集めて作り、説明していくという、まさにCFOの腕の見せ所なんだと思います。そういったところを結構短期的にガーッとやらなきゃいけなかったので、特にコロナの最初の初動は、すごく大変でした。
引き続き経営に対する知識知見を増やしていきたいと思っています。
その中で、現状に満足することなく経験したことのない新たなことにも挑戦して自身の可能性を広げていきたいですね。
ファンド投資先と一口に言っても様々だとは思うのですが、ただ総じて言えるのは、関わっているメンバー、特にマネジメントメンバーは、会社の成長だったり、自身の成長を含め、そこにすごく本気な人が多い。会社の成長に対してコミットメントしてる人たちというのがプロパーの方も含めて、私は今の環境はそういう人たちしかほぼいないという感じで、成長できる環境はすごくあったのではないかと感じています。
自身も3年半~4年ぐらい関わっていますが、その中で視野が広がったり、自分の中でビジネスマンとしては成長できたんじゃないかなと感じていますし、そういうメンバーが集まってくるというか、いろんなバックグラウンドの人がいて、ただ目指すのは会社の成長というところでいろんな知恵を出し合って、そんな視点もあるんだっていうのはすごく感じているポイントかと思います。管理部門だと例えばさっきの予算の話で、数字を作っていくとかその管理精度の向上だったりはすぐ目に見えるので、自分のやった成果や自分の成長が目に見えるという意味では、面白い環境なんじゃないと思います。そういうのを楽しめる方なのであれば、すごく面白い場所なんじゃないかと。
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