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【第7回】Exit後のCFOの業務・キャリア


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  • 2025.04.29

Exit後のCFOの業務・キャリアにはご想像のとおり、定型のものがあるわけではありません。この連載の主旨が「プロCFOを目指す方、もしくはチャレンジ中の方の参考になる文章」ということですので、私自身や知人の例を引き合いに、「想像よりは多様なキャリアがある」ということをお伝えできたらと思います。

― 1. Exit後の業務について

前回も触れた通り、Exitにはいくつかの類型があります。この類型ごとにパターンがあり、その中で対象会社が置かれている状況によって、さらにいくつか変化があると思っていただければと思います。
Exitの類型は
(ア) IPO
(イ) M&A
 ① 事業会社への売却
 ② ファンドへの売却
の3種類でした。この類型ごとに事例を踏まえながら説明していきます。

― 2. IPOの場合

IPOは一つの山場ではありますが、実際には始まりでしかありません。ご承知のとおり、IPO後は四半期決算を行って開示を行うとともに、投資家との対話(IRミーティングだけでなく、機関投資家との個別のミーティングもあります)を行っていく必要があります。
事業のビジョンや中長期の戦略については多少、定性的な内容も含みますが、決算数値および見通し(主に単年度の計画を使うことが多い)については定量的な説明・議論がなされます。昨今は投資効率(ROIC)や資金効率(CF)、資本政策(配当方針)についても方針を聞かれることになり、CFOが中心となってIR部署を組成し、対応していくことになります。
私の知人の例でもファンドからIPOし、しばらくCFOとしてIR対応をされていた方がいらっしゃいます。その方は最終的にCEOになられました。

― 3.M&A(事業会社への売却)

このパターンの場合は、買収した会社の方針・状況によって変化球があります。
(ア) 買収した会社がトップのみ派遣し、ある程度独立性が担保される場合
小が大を飲むようなM&Aの場合、買収した会社に派遣できる人材があまりいないというのが通例です。この場合は、CFOは仲介的な立場で派遣されてきた社長(及び親会社)と対象会社のミドルマネジメントとの調整・融和を図ることになります。
私自身の経験ではオーナー系会社がファンド投資先(元々オーナー系の上場会社が経営不振によりファンドの傘下となった)の買収に立ち会ったことがあります。派遣された社長は創業オーナーの薫陶を受けて「オーナーのもとで家族のように発展してきた」という感覚の方である一方、投資先のプロパー取締役は「オーナーの放蕩経営により苦しんできた」という感覚の方が多かったため、良かれと思って使われる「オーナーの指示」という言葉が、神経を逆なでしかねない(歴史が逆戻りするのでは、という心配)状況でした。
私自身は(性格的にも、立場的にも)忖度する必要はなかったため、両者がいる前で言葉にして社長の誤解を解くことができました。また、親会社(オーナー家)の方針でルール通り定年を運用するよう指示が下りてきた時に、社長とプロパー取締役から懇願されて親会社まで出向き、一定の定年延長が必要であることをオーナーに直接伝えたこともあります。その場では却下されたものの、私が退任したのちに、状況を理解いただきルールの変更がなされたと聞いて、お願いした甲斐があったなぁと思った次第です。

(イ) 買収した会社が数値面の把握を重視し、CFOを派遣する場合
この場合は(事前の準備はあるとはいえ)通常はクロージング後の社員説明会の場で退任のご挨拶をして、それを最後に新任の方と交代することになります。ファンドと同時に自身もExitする方式で、こちらの方が一般的かもしれません。
私自身は「着任の初日から」いかに自分が抜けても業務が回るようにするかを意識して部下のマネジメント・育成をしてきました。また、自ら手を動かす業務については、できるだけそのワークシートやドキュメントを読めば思考の流れが分かるようなコメントや、微調整すれば転用できるものを残してきました。
数年経って、部下と会食をする機会があって「悩んだ時には○○さんならどう考えるか、意思決定するかを考えるようにしています」と言ってもらった時にはとてもうれしかったことを覚えています。
新しいCFOの方から問い合わせを受けたことは幸いにして、一度もありません。私自身のやり方を全く変えてしまい、聞くまでもないと思われたのか、それとも部下の育成がうまくいって、聞く必要がなかったのかは今となっては分かりませんが、私自身は後者だったと思うようにしています(笑)

― 4. その後のキャリアについて

プロCFOのExit後のキャリアについては、その方その方のキャラクターや置かれている状況によって、千差万別かと思います。いくつかの事例をご紹介してみたいと思います。
(ア) ファンド業界(バイアウトファンド・VC)でずっとCXOとして働く例
最近はファンド業界が活況であることと、転職エージェントが一般的になったことから、職務経歴書にファンドでのCXO経験がある方には定期的にエージェントからのオファー連絡が来ます。
私自身もいくつかの会社でCFOを経験していますが、CFOからCEOになった後いくつかのCEOを経験されている方など、このキャリアパスが一番一般的かもしれません。
(イ) ファンドに戻りパートナーとなる例
私の20年来の知人の中には現場での陣頭指揮が終わった後、ファンドに戻ってポートフォリオのCEOをいくつかやった後、いまではファンドのパートナーになっている方がいます。
知り合った当時は「現場の方がやりがいもあるし、ファンドの仕事はあんまり興味がない」と言っていたのですが、いつのまにかファンドのパートナーになっていました。
(ウ) 自らファンドを組成してファンドマネージャーになる例
CFOとして活躍後、Exit後にファンドレイズをした人間も複数います。途中で別の方にファンドマネージャーの職を譲った(もしかすると交代させられたのかもしれませんが)例もあるし、いまでも活躍中の方もいます。
ファンドマネージャーはファンドレイズ(資金集め)、ソーシング(投資先探し)、バリューアップ(企業価値向上)、Exit(売却)など、幅広く知見が必要で大変な仕事なぶん、やりがいもあると思いますので頑張ってほしいところです。
(エ) 上場企業の社外取締役になる例
最近は社外取締役の人材不足と言われています。弁護士や会計士の資格を持った方が多く採用されるような印象がありますが、知人の中にはいくつかの社外取締役を兼任して、バリバリと活躍されている方もいます。
ご自身の知見・経験を有効に活用する一つの道だろうと思います。
(オ) 独立起業される例
プロCFOはどうしても案件ありきとなるので、前職から次職へ期間が空いてしまうことが多くなります。Exitでまとまった報酬をもらっているならともかく、次のポジションがいつ決まるかわからない中でも生活はしていかなければなりません。そのため自分の会社を設立して、事業を行いながら次のチャレンジの機会を待つ、という方も一定程度いる印象です。
そのままずっと個人事業的に業務を行う場合もあるでしょうし、CXOを引受けつつ、個人の会社でも継続して顧問的なお仕事をされている例も多々あります。

全7回にわたってプロCFOへの道として、実体験をふまえて各フェーズでの役割や進め方を連載させていただきました。

私自身もキャリアの棚卸や実務の体系化・言語化をすることができました。このような機会を頂戴して感謝いたします。チャンスは準備する心に降り立つ(パスツール)と言います。私自身は全くできていませんが(笑)、悩んだら難しい方を選ぶ、という考え方もあるかと思います。なにごともやってみないとわからない、チャレンジしてみたら何とかなった、もしくは良い経験だったということの方が多いものです。

今回の連載がこれからチャレンジする皆様の参考になれば幸甚です。

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