Professional CFO Interview
株式会社Blueship
CFO
1996年 名古屋市立大学経済学部卒
同年 個人にてハウスクリーニング業開始
2003年 株式会社リーガルマインド入社 経営企画室
2005年 EY新日本有限責任監査法人入所
2020年 C Channel株式会社入社 CFOを務める
2023年 ジャパンシステム株式会社入社(ロングリーチ投資先)
2024年 株式会社Blueship CFO就任(2024年2月時点)
(直近ロングリーチ社が資本業務提携を行った企業)
ダメダメな学生でしたね。最近の学生の皆さんは意識も高くしっかり勉強されたり、インターンなどやられていますが、私の大学時代は、のんびりしたものでした。バイトとクラブ活動に明け暮れる毎日でした。
4年間継続したものがマンドリンです。比較的マイナーな楽器ですが、オーケストラに入るのは敷居が高すぎてダメだけど、マンドリンなら大学デビューでも行けるのではと思い入りました。この直感が当たり4年間唯一継続できた趣味です。
自分らしさとは?みたいな疑問をたまたま持ってしまったのが、大学生後半だったのが大きいですね。普通に就活をして、内定をもらいそのまま就職というコースに乗っていたのですが、このままではいけないみたいな気持ちが沸々と湧いてきて、自分でビジネスを展開したいと考えました。ハウスクリーニング業だったのは、親族が不動産関連の仕事をしていたので親和性のあるビジネスを展開すれば苦労は少ないだろうという考えで始めました。
数年たってビジネス成長が限定的であったこともあり、一度勉強が必要と考えました。当時の選択肢としては、MBA取得もしくは資格取得が浮かび、まだ希少価値の高い資格取得を選択しました。その際、子供のころから漠然となりたいと思っていた弁護士にするか、大学時代に知った公認会計士にするかという選択がありましたが、取得可能性と経営視点を得るためには、公認会計士の方が望ましいだろうと思って取得に至ります。
元々が起業から始まっているという経歴なので、いわゆる若手時代は社内に先輩などもおらず、会社をいかにスケールさせるかしか考えていませんでした。今振り返っても、若さゆえの貴重なチャレンジであったなと思います。
逆にサラリーマンとなるのは、会計士資格を取得してからで、同期は新卒世代のメンバーで、年齢ギャップがありました。でも起業するための公認会計士であったので、あまり気にすることもなかったですし、短期間で離れるだろうなと考えていました。
結果としては、EYでの在籍期間が15年ほどと、当初の思惑とは大きく外れたところは、予想外でした。理由としては、毎年経験する仕事も何かしら変化があり、成長実感を持てたので、やめるという気持ちが徐々に薄れてきたのがあります。チームで仕事をしていたので、つながりを実感してきたところもありました。
話がそれましたが、若手の時は自分の武器=経験を持つことだけに集中していました。私の場合は、それが資格取得であり、業務を通してのスペシャリストとしての経験でした。
私の人生の選択はいつもタイミングとご縁で、流れに身を任せています。自分の選択を正解とするための努力をすれば良いと割り切っているので、思いがけない経験をできることも多いです。
C Channelを選択した理由は、圧倒的なスピード感のある会社であったと実感したからです。当時、複数の会社のオファーを頂いておりましたが、面談から採用までのスピード感が桁外れで会社の意思決定スピードも早くてダイナミックな動きを期待して入社しました。具体的なエピソードとして、私の採用決定まで4時間程でした。15時にCFOの方と会って気に入って頂いたらしく、他の執行役員の方、社長と面談し当日中にオファーが出ました。急に社長と面談っていうのもなかなかないのでエージェントの方もビックリされていました。
その場にいると自然に受け入れてしまって早さを実感することもなかったですが、今振り返ってみると実際にその意思決定スピードは早かったですね。私自身も、入社時の役割は経理部長でしたが、その半年後には経営企画本部全体に関する取締役になり、1年後にCFOになり、2年経ったころには常務取締役CFOにまでなっていました。
様々な方との出会いも刺激的で、入社時のCFOは外国籍の方で、彼の考え方の影響を結構受けました。とことん合理的で情熱と冷静さを併せ持った素晴らしい方でした。
私は比較的冷静さが際立っているところがあるので、必要に応じて情熱を前面に出すなど求められる役割を全うすることを今でも心がけています。
もちろん、C Channelの森川社長ともかけがえのない時間を共有させてもらいましたので、感謝しかないです。挑戦にかける情熱は圧倒的で、私も挑戦か見送るか悩んだときは、まず挑戦するためにはどうすべきかといった視点で物事を見るように意識するようにしています。
まさに運命の巡り合わせで入った会社でしたが、多くの出会い、幅広な経験をさせてもらって一気に成長できた数年間でした。
社長との相性の部分もあったのではないかと思います。話す中で何かひらめくものがあったというか、事業ビジョンがうまくはまり、それに向けて明確に役割分担が出来たという事でしょうか。また早さと結果・実行という部分も評価されたのではないかと思います。
入社タイミングが、9月で決算期変更も実施したこともあり、12月までの4か月間でPMIの遂行とレポートラインの円滑な運用が主な業務となります。今までオーナー企業として素晴らしい成長を遂げている会社ではありますが、ここから組織の力を結集することで、非連続な成長を実現することが求められています。PMIは一旦区切りがついたので、さらなる成長実現のための組織体制の構築や管理の高度化、グループ会社であるジャパンシステムとのシナジーの発揮が現在の業務内容となります。
お陰様で必要条件はそろっています。ファンドからの出資の少し後にServiceNow社からアメリカ以外で初出資を受けた会社となり、世界でも指折りの企業から評価されているBlueshipには成長しか似合わないです。
関係者の期待をエネルギーに変えて、走り続けたいですね。
自分から積極的に動くことを心がけています。実際、社員は良くわらかない人が急に来たなと思うでしょう。社内の空気を把握するために、少なくとも情報が集まっているキーマンの方を見つけて、こちらから自然にコンタクトを取っていくというのはあったのかなと思います。
全ては会社成長のために、しっかりと経営者としての役割を果たすことです。今までがオーナー企業であったこともあり、社長一任に近いところも少なからずありました。これはスピード感という点では最大のメリットを生みますが、ガバナンスという観点からは懸念も生じます。外部株主からの出資を受けた会社として適切なレベルでのガバナンスを利かせることは必須ですし、私の業務としてもこの意識を常に持ち続ける必要があります。その際のガバナンスの利かせ方ひとつとっても、経営として会社の成長に寄与するためにはどのような要素が必要かという考え方を常にしています。
メンバーに丁寧に伝達することも意識しています。せっかく素晴らしい仕組みを構築できたとしても運用が不十分だと効果は限定的となってしまうので、デリバリは伝えきるまでやるということもこだわり続けています。
また、ロングリーチビジネスパートナーズ社(LBP)※1について感じられた事はありますか
PMIで一番意識することは、一体感と納得感です。
私自身は会計士としての立場からPMI業務を実施することが多々ありますが、当事者としてPMIを実施する機会は多くありませんでした。しかも今回のPMIは、ゆるやかな企業体として機能させることが区切りになるので、通り一辺倒ではいけないし、グループ会社とあまりに相違するレベルでもいけないという目線を意識して構築することが求められましたので、難度高めだったなと感じます。最終的には個社ごとの特性を生かしつつも、一体感を持たせつつという点がポイントでした。
あとは、ルール変更することで、どのような変化があるのか、なぜ実施する必要があるのかという点をメンバーにきっちりと説明することが必要だなと感じています。納得しないとメンバーも動き出せないので、丁寧にやっています。
LBPについて、彼らはほんとに痒い所に手が届くというか、非常に戦力になって頂いています。気になったらすぐにサポートしてくれ、オペレーション寄りの事も含め一緒に課題解決するので、1週間に2~3回はお話する感じです。
ゴールとして何をやりたいか、それを会社に当てはめるとどうかという議論を絶えずメンバーとするようにしています。当初のイメージと相違していた点として、要件定義し、メンバーが納得すると走り切れるところは当社の強みであると感じています。
事前に想定していたよりも大きな違いがありました。PEファンド投資先では、一定のルールはすでにあり、そのルールの中でいかに効率よく事業成長させていくかという視点での会話が多くあるかなと感じています。
一方で、スタートアップベンチャーではルールを変更させることも厭わず、会社を効率というより最大限成長させるという力点の置かれ方があるかなと感じました。
CFOとしての役割もその特徴に応じて使い分けが必要です。投資ファンド傘下では、事業の整理も含め与えられた資源をいかに有効に活用していくかというところに力点が置かれています。スタートアップベンチャーでは不足あれば自ら調達してきて充足させるという発想になります。ここだけ取り上げるとダイナミックな動きを求められるのがスタートアップで、精緻な動きを求められるのが、ファンド投資先といった感じになります。ただ、私がジョインしているBlueshipが面白いのは、ファンド投資先であるのですが、スタートアップとしての要素を色濃く残すところです。なので、効率も考慮しつつも、爆発的な成長をするための仕掛けを常に考える必要があります。この絶妙なバランスを舵取っていくことは実に刺激的ですし、楽しいです。
あとは、株主であるファンドメンバーとのコミュニケーション量に圧倒的に相違があります。ガバナンス機能自体はファンドメンバーがにらみを利かせてくれ、自分の感覚と違うアクセル、ブレーキを体感でき、その軸も取り入れることも勉強にもなります。
正直苦労したなと思う所はないですね。といってしまうと終わってしまうので掘り下げなければいけませんが、私の感覚と合う会社であったことが、ストレスなく入れた要員です。特に、ジャパンシステムとBlueshipの両社長との距離感をすぐに詰められたことが大きいですね。「会社のためにやるべきことをやります」宣言を受け止めてもらっています。
業務自体は当然不慣れなことが多いですが、それをいかに楽しめるかは重要な要素だと思います。私はよく採用面談で候補者の方に、この環境を楽しんでねと結びの言葉を伝えることが多いですが、私自身も楽しむための努力は怠りません。まずは、自分の意見をしっかり伝え、相手の意見もしっかり聞くところから始めます。事実と希望・考えを明確に区分し、正しく状況を理解して、そこから最善の打ち手を考えていくことで乗り越えました。当然、短期的な対処と中長期的な抜本的改善は異なりますので、そのあたりも意識して、過度に最初からこだわり過ぎないのも大事ではないかと思います。
前年までは、会社の現状を生かして対応してきましたが、これからは会社のさらなる成長のための仕組み作りや組織作りは、困難なことも多いでしょうし、やりがいもそれ以上にありそうなので楽しみにしています。
非常に紳士的なファンドであり、一緒に投資先企業を成長させようという強い意志を感じました。彼らの投資スタンスが比較的長期であることも背景にはあると思いますが、大きな成長を実現するためのパートナーとしては良い組み合わせだと確信しています。
担当されているファンドメンバーのいずれとコミュニケーションをとっても合理的な反応が返ってくるので、業務も進めやすいです。
私自身がファンド傘下の投資先への関与が初めてでしたので、お作法すべて支援を受けています。彼らの後ろにいるLPの存在であったり、彼らの立ち位置であったりなどは、実際に触れ合わなければ正直知ることはなかったなと思います。当然の話になりますが、単独株主のため彼らとの期待値擦り合わせはやりやすいです。
まずは、今の案件を無事エグジットまで導くことが最低限の責務ですので、そこをしっかりやり切ることを意識しています。当然ですが、会社はファンドのエグジットというイベントはあるものの、それとは関係なく成長し続けることが必要ですので、そのための基礎をどれだけ植えつけられるかを意識しています。私自身も新規事業の立ち上げと成長というミッションを持っているので、注力して楽しんでいきたいですね。稼ぐCFOは自分の理想像の一側面なので、実現させていきます。
別軸ですと、私自身の個人事業として、スタートアップを中心にCFO業務をパートタイムで提供するサービスを展開していますので、そちらも積極的に活動していきたいと考えています。お陰様でEYでの経験や経営者としての経験を自分なりに棚卸してみると、組織運営に必要なことはすべて網羅できていますので、多くの会社に価値を還元できると自負しています。社長の壁打ち相手、右腕として組織成長にコミットして機能する役割を多くの会社と実現したいです。
日本パートナーCFO協会※2という団体に属しており、同期の仲間のネットワークを駆使すれば全国のあらゆる会社の課題解決ができるので、「なんだそれ?」と思った方は是非、SNSでご連絡ください!
あまり偉そうに言えませんが、少なくともスタートアップで言うところのCFOに求められているのは、なんでも拾う人かと思っています。組織を作ることが非常に大事な役割なので、何事も積極的に拾える人はぜひスタートアップで経験を積んで、CFOを目指して頂くと相性良いと思っています。
また足りないものを補える・勉強したりすることの好奇心であったり、ネットワークですかね。ちょうど一昨日くらいに知り合いのCFOが横のつながり作りましょうとSlackが立ち上がって今20名くらい集まっています。領域が広く難しくなっていくので、一人でわかるなんて言えないんですよね。そうやって相談できる環境を築ければ成功間違いなしかと思います。
私自身は経歴のところでお話しした通り、気づいたらCFOというキャリアに到達したという感覚です。日々の業務で一生懸命にやり続けることで、最短距離で経営者の一人としての経験を得ることができました。これは私にとっては大きな転機で、皆さんにもぜひ実感してもらいたいです。
経験する前後では、視座の持ち方など大きく変わりました。何よりも勉強する領域、割く時間の意識が全く変わりました。人生で一番書物を読んだり、交流を図ったりなど貪欲に色々なことを吸収したいと思える自分にも出会えました。
そういう意味では、まだまだ勉強中のCFOという段階ではありますが、皆さんに一言申し上げるとすると、自身のCFO像はどのようなものかを具現化しておくとよいかと思います。
CFOの方と話す機会も増えてきましたが、いろいろなCFOがいるなと感じます。CFOの役割は一定の型があるものの、自分の意識次第で大きく変化します。私自身は比較的幅広にやりたい性格なので、数字だけにこだわらず課題解消責任者として企業成長を推進できれば非常に達成感を持っています。この記事を読んでくれた方は是非、ご自身の理想とするCFO像を描いてもらって、それに向けての自分なりの経験を着実に積んでいただければと思います。色々な道があってよいですし、どの道でも経験値はたまります。
※1.LBP(ロングリーチビジネスパートナーズ)
2023年に設立されたロングリーチグループ内の常駐型バリューアップ実行支援コンサルティング会社。
投資案件のPMIの効率性及びクオリティーの向上やバリュークリエーションの再現性を高める。
※2.日本パートナーCFO協会
中小ベンチャー企業での社外No.2、パートナーCFOを広く一般に普及することを目的として、認定・教育・普及・紹介活動を行う一般社団法人。
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