プロCFOインタビュー

Professional CFO Interview

体系図で捉え、相手の求めることの更に上を意識する

古屋佑樹

株式会社ライズ・コンサルティング・グループ

財務部部長

古屋佑樹様

2012年04月 株式会社エイチ・アイ・エス
2015年02月 株式会社ネクソン
2018年10月 株式会社アドベンチャー
2019年09月 株式会社BAKE
(2017年8月にポラリス・キャピタル・グループと資本提携)
2020年02月 株式会社ライズ・コンサルティング・グループ
(2020年12月にCLSAと資本提携、2023年9月12日グロース市場上場達成)
※インタビュー時点(2024年3月時点)での内容となります。

国内外で活躍できる、選択肢が広がると思い経理の道へ

―自己紹介をお願いします

財務経理キャリアを築いていくために商学部会計学科にて勉強をおこない、上場会社の経理スタッフとしてキャリアをスタートしました。
上場会社にて経理・財務・経営企画を経験し、IPOを実現したいと思い株式会社BAKEと株式会社ライズ・コンサルティング・グループへ転職を行いました。
株式会社BAKEにおいては、自身の努力ではIPO達成できない要素が多いと感じ、すぐに転職を実施した形になります。
株式会社ライズ・コンサルティング・グループにおいては、スタッフ(シニアアソシエイト)として入社しましたが、LBO対応から上場審査対応まで主担当として対応させていただき、その貢献を評価していただいたことにより毎年昇格をし、入社して2年目においては部長に任命いただきました。
自身が成し遂げたいと考えたことや自分以外とお約束したことに関しては、どのようなことがあっても達成するという気持ち及び達成するまでの道筋をしっかり立てる力はこれまでのキャリアを振り返ってみても強いと考えています。

-高校生の時からご自身の今後のキャリアについて考えられていたのですか

実は、歴史が好きで本当は文学部歴史学科に行きたかったのです(笑)
当時、母は好きな事を勉強すればいいという考えでしたが、一方で父は学んだことがそのまま仕事になることを軸に選択して欲しいという考えでした。母の説得もあったのですが、結局お金を払うのは俺(父)だということで、そもそも何で大学に行くのかというところの説明から始まりましたね(笑)
その中で、将来食い扶持に困らない職業は何だろうと考えたときに、特に経理・総務・労務で、その中でも経理だなと感じていました。それは定量的で、国内、また日本だけでなく色々な国でも活躍できるというところで、打算的に選択肢が広がると考えた時に経理かなと。そういう観点でしたね。

-どのような学生時代だったのでしょうか

商学部会計学科に入学し会計を学んだのは、将来食い扶持に困らない職業は何だろうと考えたとき、経理・労務・法務と考え、その中でもっともとロジカルに普遍的に習得ができそうなのが、会計だったためです。
在学中は、ダブルスクールで会計士の勉強を大学3年生の就職活動を始める時まで行っておりました。
残念ながら会計士資格取得までは至りませんでしたが、そこで得た知識及び根気強くかつ自ら学んでいく姿勢というのは、その後キャリアを築いていく中でも活きていると感じております。

-大学ご卒業後の最初の3社は上場企業でしたが、IPOを実現したいという思いに至ったきっかけや心境の変化がありましたら教えて下さい

そうですね。1社目は比較的大きい会社なので、経理だけじゃなく営業まで全般まで経験でき、またベンチャー気質な社風もあり、若手社員が活躍しているところを身近なところで見えるところが良かったです。その中で、次第に経理部の中でも担当する範囲が一つの科目へと限定されていき、もう少し幅広く任せてもらえる会社を探していたところ、ネクソンに出会いました。ネクソンでは、当時のCFOの方や諸先輩方の影響を強く受け、私のこれまでの人生のコアとなっています。
そうした経験をさせてもらっている中、ずっと先輩たちに守られていても仕方ないと感じ、更に成長したいという思いから、組織を一任して頂けるということでアドベンチャーに入社しました。その後、上場というところを経験し、対外評価を高めたいと感じ転職しました。こうやって、大学卒業から、自分自身の軸が深堀りされていったのが最初の3社かなと思います。

-現職では、シニアアソシエイトから入って、2年目には部長に抜擢されていますが、ご自身の特にどのような点が評価されたと思いますか

2020年2月に入社したのですが(当時のCFOはその後4月に入社)、当時何もない状況下の中で、CFOの方が今何を求めているのか、次は何を求められるのかを常に考えて仕事をしていました。
例えば、規定を作ってと言われた時に、一つ一つの規定を作るだけでなく、体系図で捉えて考えていました。それは組織規程があるならば、その下に会議規定もあり、また人事規定の中には就業規則があるといったように、まず規定体系図を作り、その優先順位の中で経理を超えたところまで作成していくことを意識していましたね。予め相手がここまで求めてくるであろうというところまで想定して進言していき、常に一つ上の仕事をするように意識していました。
また、当然それが間違っていたこともありましたが、間違いが判明した時点ですぐにリカバリープランを考えて、状況によって自分で手を動かしながらマネジメントできたことは当時評価頂けたのかなと思っています。

若手時代の経験がキャリアのコアに

-今後のキャリアのご志向をしっかりと持たれていた印象ですが、いつぐらいから意識し始めていたのですか

株式会社ネクソンに在籍していたころからキャリアについてより具体的に志向を持つようになりました。
これまで在籍した会社すべてにおいて尊敬できる諸先輩方はもちろんおりますが、特に株式会社ネクソンでお世話になった諸先輩及びCFOはキャリアの志向性を考える必要性があると気づかせてくださいました。
また26歳頃に結婚をしましたので、家族のことを考えたらもっとキャリアを確実に醸成しなければと考えたのも志向性をもつことに影響を及ぼしているかと思います。

-ネクソン時代上司の方のどんなところが魅力でしたか

例えば、ネクソンの考え方は、資料作成に関してもワンシートで全部説明が伝わるということです。それは値張りではなく全部関数を組んで説明できるということが凄く重要なのだとはっきり教わったことです。今の私の仕事の礎はこの時の経験で出来上がったのかなと思っています。
またネクソンでは、会計士、税理士の方やそうでない方々まで皆が、次はこういう仕事がくるだろうとか、予め他の人が欲しいものを想定して準備をされているんですね。自分だけのものじゃないゴールをしっかりとイメージされて準備ができる方々がほとんどでした。どのようなロジックや整合性があってこれを使ったのかを説明できないものは一切ないような状況で作られています。ですから、担当がまとめて休んでいても、他の人間がすぐに対応出来る状況下を常に作り上げている環境でした。
また当時のCFOは、限られた時間で資料を渡された中でも、あらゆる確度で議論・分析が出来る方でした。例えば、経理とか労務は職位毎の縦串・横串になると思うのですが、彼は斜め串で考えられる方でした。それも定型的な斜め串だけでなく、状況に応じた斜め串が出来、情報を整理できる方だったのでとても参考になっていました。
この時ぐらいから、漠然とプロCFOになっていたいという思いが芽生えてきました。
当時の先輩方とは今でも付き合いがあるのですが、まだまだ今の私にはたどり着けないなと感じています。

-ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか

これもネクソン時代なのですが、自分の集計・成形した資料を上席に提出した際に、この資料をみて何をもって適切である事を証明し、何を示唆しようとしているか分からないと言われたことです。
経理として一定慣れてきた頃であり、漠然と与えられた業務をこなしているだけになっているところがあったため、本質的になぜこの業務を行っているのか、次のステップを考えたときにどのようなことをすべきかが漏れていたと思います。
その指摘をいただいて以降は、どのような思考をもって対応したのか、何を示唆したいのかを最大限伝えられるように試行錯誤をするように意識的にしております。

PEファンド投資先で働く魅力と苦労

-これまでPEファンド投資先を2社ご経験されていると思いますが、ファンド投資先で働く魅力は何だと思いわれますか。また苦労された点はどんなことだったでしょうか

PEファンドの方々は、数多くの会社をみられていることによる成功・失敗を惜しみなく共有してくださるため、一事業会社にいるだけでは得られなかったことを知ることができるのは魅力的だと考えております。
一方で海千山千の猛者の方々なので、しっかり考えをもって接しないと一瞬で考えの甘いポイントを指摘されてしまいますので、事前の検証と相手とお話ししているときも相手の回答によってどのような対応が次に必要かをずっと検討および準備をする必要がある点はとても苦労しました。

-事業会社にいるだけでは得られなかったこととして、具体的に何がありましたか

まず、時間を掛ければ得られるものが、短期間で得られる事かと思います。
また、数字を良くするために本当に追うべきものの基準値は上がると感じました。
それは、事業会社では内輪の議論ですので、厳しい言及だったりとか検討を逃げたりすることもありますが、ファンドが入ることによって、これまでの投資ポートフォリオ内の成功事例や他社の生々しい情報も踏まえてより定量的に分析することができ、物事を細分化できることで、より深い議論が出来ることはメリットと感じます。
これまで創造の中だけで、業界の慣行ということもあったりだとか、これぐらいは仕方ないよねと曖昧にしていた部分が、より細かい分析であったり志向性を持つことで、更に深い検討ができたかなと思います。

-以降の質問の回答にもありますが、非常に合理的で経験豊富なファンドの方々と現場の間に入っている中で、難しい曲面やハレーションのようなものはありましたか。また立ち回りとして工夫していたことなどありましたら教えて下さい

結構ありました。それは、合理的には説明が付くのですが、感情的には困難な状況は多々あります。
例えば、イグジットで上場を目指す中で、N-3期でどれだけ整備できるかでその後のランニングが変わってきます。ただ、やるべきことを是々非々で進めてしまうと、上場準備前からいた社員の方は受け入れられなくなってしまいます。
そういった難しい場面を経験しながら、特に2年目くらいからは意識を変えていきました。
それは、必ず『過程は何か』の説明をすることと、資料作成は『誰でも分かるような内容』にするように心がけていきました。
また何をするにしても、検討段階からお伝えするように心がけていました。そして、結果はこのようになりますよと、今の会社の現状に合わせながら示してあげることで、現場から見た時に、妥協させた、検討させたと感じてもらうことで、納得感得られるような伝え方を意識していました。

-現在の主な業務内容についてお聞かせください

上場を果たした後は、取締役会で報告する月次報告のとりまとめ・開示関連・財務戦略の立案と各種会議体の事務局などでのサポートなどになります。

-現在業務を進める中で心がけている事はどういったことでしょうか

上述させていただいていることとかぶってしまいますが、次のStepや異なる立ち位置の方々へどのような影響があるのか、その影響が短期・中長朝でどのように会社に現れてくるのかなどを想定することを心がけております。

-現職PEファンド投資先で上場達成されていますが、苦労された点や工夫された点はありますか

PEファンドという観点ですと上場タイミングやバリュエーションに際して、ファンドとの調整などがある点でしょうか。
上場達成という点ですと、非公開会社が公開会社になるのにあたって絶対できていないといけないポイントに関して是々非々で修正や導入などを実施すると内部でハレーションが起きてしまうので段階を踏んで取り組むなどの調整が必要だった点だと思います。
会社をより安定して成長させていくための一歩であることをしっかりご説明していくことにより、円満に進めることができたと考えています。

-PEファンド投資先とベンチャーでの経験が有られますがどういった違い、魅力があると感じますか

どちらも魅力だと思います。
違いは、バリュエーションを上げるためにこれまでの投資先での検証結果をもとに多くの手を打とうとしてくださるのがPEファンド、事業者の熱い思いや知見をもとに手を打ってくるのがベンチャーだと思います
シードの段階ではベンチャー企業のほうがより成長及びチャレンジできるところが多いと思いますし面白いのかなと思います。
一方でラージやIPOといったフェーズになるとPEファンドなどのサポートしてくださる方がいたほうが確度は高まると思います。

-率直にCLSA社のプロフェッショナルの方々についてはどういった印象を持たれていますか

CxOとしてどの領域でも投資先企業を成長させることができる方々が集まっていると感じています。

-CLSA社からは上場準備やバリューアップについてどのような支援を受けられており、どういったメリットがあると感じられますか

そうですね。どのファンドもみなさん優秀でありながら、キャラクターの違いは感じています。
投資内容や規模感の違い、情に熱いファンドもあったり、対象会社への関与度合いの違いなど、それぞれ特色が出ていると思います。

-今回の転職活動を通して様々なファンドともやり取りがありましたがそれぞれの違いはありましたか

そうですね。どのファンドもみなさん優秀でありながら、キャラクターの違いは感じています。
投資内容や規模感の違い、情に熱いファンドもあったり、対象会社への関与度合いの違いなど、それぞれ特色が出ていると思います。

-現職では、直接ファンドにレポーティングする機会はありましたか。またどのくらいの頻度でどのようなやり取りをされていたのでしょうか

ありました。投資実行間もない頃は週に1回程度ありましたが、3ヶ月後には月に1回程度、上場前は月に2~3回でした。

-古屋様の今後の展望についてはどういった事を想定されていらっしゃいますか

CFOは、会社成長を財務のプロフェッショナルという視点から企業の資金調達、財務戦略の立案・執行、企業内の財務マネジメント全般をするものだと考えています。
将来的には、成長していきたいと考えている企業の方々から相談されるような人材になりたいと考えています。

-財務以外の面での経験として、今後身に付けていきたいスキル・経験はどんなものがありますか

そうですね。次の環境でM&AやPMIは学んでいきたいですね。
また、マーケティングの勉強をしようと思っています。そうすることによって、市場分析する際にその業界や業態、規定概念にとらわれない派生した発想や施策が打てるようになると思うので今後磨いていきたいと思います。

-今後、想定通りいった場合、イグジットの際は40歳ぐらいになっていると思いますが、次のステップはどのように考えられていますか

特に会社のステージには拘りはありません。
どちらかと言うと、自身のCFOのFをEにすることが重要なポイントだと思っています。
だからこそマーケティングの勉強をしようと思っています。
それは、CEOになりたいという目標があるというより、CEOの気質を持ったCFOであればどのステージの会社でも活躍できると思っています。

CFOを目指されている方に

-CFOになるために、どういった経験・能力が必要だと思いますか

情報を点でつなげる方が多いですが、点と点をつないで線にすることが大事だと思っています。またその線をロジカルに整合性持って説明ができるとのかいうところが重要なポイントかなと思っています。それが、どのように次の分岐点であったりだとか、他のところにつなぐことができる可能性があるのかというところを検証すること、それが正しいものであるのかというのをもう1度振り返ることができ、その覚悟があるのかを問うことが大事かと思います。

-最後にCFO目指されている方やファンド投資先に関心を持たれている方にメッセージをお願いします

CFOというポジションは、肩書でしかないと思います。自身が得意とする分野において自身の理念に則り誠実に業務を行うことをしていれば、気づいたらなっているものだと思います。
その理念や取り組み方について不安に感じることも多いと思いますが、PEファンドの方々を壁打ち相手とすることで間違っていないことの革新や間違っていたとしたらどう軌道修正するかなどを検討できます。
そういった面でもPEファンドの方々は魅力的だと思います。

古屋佑樹

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