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【第2回】VCやPEからの資金調達、調達後の株主との関わり方について


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  • 2025.04.28
  • |2025-04-29更新

― 1. 投資家の属性

エクイティによる資金調達を行ううえでは、様々な投資家にアプローチしていくこととなりますが、以下に主な投資家の属性について、説明していきます。

①国内外のVC

最もポピュラーな調達先であり、日本においても数多くのVCが立ち上がっていることから、資金調達の選択肢は間違いなく増加しています。VCによって投資戦略も大きく異なっている(投資するスタートアップのステージ、投資サイズ、投資後のガバナンス体制や支援体制など)ことから、事前によくヒアリングを行うことと、当該VCの投資先の経営者などにレファレンスチェックを行うことをオススメします。
正直なところ、事業が厳しい局面で投資先に寄り添わないキャピタリストもいるという噂は、よく業界に回ってきます。特にアーリーの投資家とは長い付き合いとなり、投資後にずっと良いことばかり続くことは稀であることから、信頼の置ける投資家を見つけていく必要があります。

②事業会社・CVC

特にスタートアップにおいては、知名度や信用力の不足も含めた営業力の不足により、事業成長が頭打ちとなるケースも多いです。特にそうしたケースでは、大手の事業会社を株主として迎え、営業力を強化することで、シナジーを発揮するケースが見受けられます。
また別の回でも詳細は説明しますが、事業会社の傘下にいったん入り、その後IPOを目指す「スイングバイIPO」の事例も最近では増えてきています。

③クロスオーバー投資家(機関投資家)

特に2021年末のSaaSバブルが弾ける前においては、通常は上場株に投資する機関投資家が、未上場のスタートアップ(主にレイターステージ)に投資する事例が数多くありました。SaaSバブルが弾けた後も、引き続き継続している投資家も存在し、例えば香港の投資家であるKeyrockはニーリーやゼロボード、大型IPOで話題になったタイミーなどにも出資しています。
クロスオーバー投資家を迎えるメリットとしては、上場前後において、追加出資も含めた長期的なコミットをしてもらえる可能性があります。通常、IPO時にVCは持ち分の大半を売却するケースが多いが、クロスオーバー投資家の場合は、上場後もそのまま株式を持ち続けることも期待できます。
それ以外のメリットとして、著名なクロスオーバー投資家に投資してもらえたこと自体が対外的なアピール材料になる、といったことが挙げられます。

④PEファンド

PEファンドは原理原則として、投資先の過半数の持ち分を保有することが通常でありますが、グロース投資の一環で、マイノリティ出資するケースもあります。直近の事例としては、KKRによるSmartHRへの出資です。少し前の事例でいうと、同じくKKRによるDataXへの出資やカーライルによるSpiberへの出資などがあります。
またスタートアップに過半数の出資を行う事例が出始めており、直近でいうとEQTによるHRブレインへの出資、Potentia・J-STARによるjinjerへの出資、ポラリスによるストックマークへの出資などが挙げられます。
PEファンドから出資を受けるメリットは、特に過半数の出資を受けるケースにおいて、ハンズオンで支援を受けられ、PEファンドが持つ様々なリソース(資金調達や人材ネットワークなど)を活用することができることです。また、株主が分散しているのに比べて、株主を集約することで、スピーディに意思決定を行っていくことも可能となります。
一方でデメリットとしては、過半数の出資を受けた場合は、PEファンドの影響力が強くなり、創業者の一存で物事を全て決めていくことは基本的にできなくなります。事業の方針やIPOを含めた資本政策の方針でコンフリクトが発生するケースもあることから、投資前においては株主間契約で経営方針や意思決定の方法については事前に握っていく必要があるのと、投資後においては良好なリレーション作りに努める必要があります。

― 2. 資金調達のスケジュールや進め方、留意すべき事項

一般論として、資金調達に必要な期間の目安として最低でも6ヶ月程度と言われることも多いですが、金融市況の変化など外部環境は移りやすいものであることを勘案すると、もう少し余裕を持って動き始めるのが理想となります。具体的なプロセスについて、順を追って説明していきます。

①ファイナンス方針の策定

まず行うべきは、CEOと今回のファイナンスで目指す調達額やバリュエーション、その他条件について、認識を擦り合わせるところから始まります。ここはCEOのキャラクターに依るところでもありますが、資金使途が不明瞭であり、とりあえず大きく調達しておくといった形で、アグレッシブすぎる調達額及びバリュエーションの水準になっている事例も散見されます。高すぎる水準で調達すると、その後のラウンドでのファイナンスやExit時のバーがどんどん高くなってしまい、今後の資本政策の足枷になってしまう可能性もあることから、投資家とのコミュニケーションも重ねつつ、あくまでもフェアバリューでの調達を心がけることが重要です。

②各種資料の準備

1.プレゼン資料

投資家向けのプレゼン資料については、面談用のやや簡易的なものと、さらにフェーズが進んだ際のより詳細な資料の2パターンを用意することがオススメです。また、海外の投資家にアプローチする場合には、先に英語版を用意し、それを日本訳する方が資料の体裁を整えるという観点では楽になります。
投資家向けのプレゼン資料については、以下のような要素を盛り込むのが一般的です。

1)会社概要(経営陣の略歴やミッション・ビジョンなどを含む)
2)事業内容・競争優位性
3)マクロ環境・競争環境
4)成長戦略・事業計画
5)財務数値・KPI

それ以外にも、「逆に自分が投資家だったら、どんなことを聞くだろうか」というような視点で、資料を準備しておくのと、投資家とのコミュニケーションを重ねる中で、少しずつ資料を追加していきます。

2.契約書

初回プレゼン後に、初期的な検討資料及びデュー・デリジェンス用の資料を開示する上で、秘密保持契約書(NDA)を日英の両方を用意しておきます。その他、実際の投資契約書のドラフトについても、過去ラウンドで締結したものをベースに徐々に準備を進めておいた方が、その後のプロセスをスムーズに進めることができます。海外投資家との契約書を日本語にするか、英語にするかは投資家の意向次第ではありますが、基本的には日本語ベースで対応した方が、他投資家とのコミュニケーションも含めて望ましいです。

3.RFP (Request for Proposal)

CEOと事前にすり合わせた内容に沿って、作成していきます。調達額や株式の評価額、投資後のガバナンス体制など、絶対に譲れないポイントについては、漏れなく正直に記載していきます。DDなどのプロセスがかなり進んだ後に、「こんなはずではなかった」「思っていたのと違った」といった形で双方の認識相違によりプロセスがストップすることもありますが、RFPを充実させることで、双方にとって無駄な時間やコストを費やさないようにしていく必要があります。

4.DD用の資料

Google Driveやboxなどのツールを使って、投資家がDDの際に開示を要求してくると思われる資料を事前に準備しておくと、その後のプロセスが円滑に進みます。もし上場準備が進んでいる企業であれば、主幹事証券会社から要求される資料の最新版を整えておくと、かなりの部分を流用することが可能となります。

③投資家へのアプローチ

投資家へのアプローチ方法としては、

1)既存株主からの紹介
2)金融機関(主に証券会社)からの紹介
3)リンクトインなどでの直接アプローチ

などが挙げられます。

紹介してもらう場合には、ティーザーのような形で、1~2ページで端的に会社概要や事業概要が分かるようなものを用意しておくと、紹介元の人も投資家に説明がしやすく、紹介してもらいやすくなることが期待されます。
また本命の投資家には序盤にアプローチしないことをオススメします。初期の頃はプレゼン自体がまだ洗練されておらず、投資家とのコミュニケーションを繰り返すことで徐々にブラッシュアップされていくものであることから、絶対に入って欲しい投資家は少し後回しにして、プレゼンに一定自信がでてきたからコンタクトを取ることがオススメです。

④DD対応・クロージング

基本的には通常のM&A・資金調達の時と同様の対応であり、スタートアップならではの対応といったものは少ないですが、特にKPI関連の開示については、管理体制が脆弱であると、事業計画や決算書の数字と整合性が取れていなかったりするケースもあります。そうなると投資家からの信頼を失う可能性もあるため、事前に各種経営数値についてはしっかりと整備をしておきたいところです。
また、CEOやCFOだけでなく、COOやCTOなどの他経営陣とのインタビューやプロダクトのデモなどを依頼されるケースも多いです。そういった場合には、事前にエクイティストーリーを中心に投資家とどのようなコミュニケーションをしているのかを説明し、投資家向け説明の整合性がきちんと取れるような振り付けを行っておく必要があります。
当然のことではありますが、資金調達は契約書の締結ではなく、キャッシュが銀行口座に入金されて初めて完了となり、できるだけ前倒しでプロセスを進めるべきです。スケジュールに余裕を持って進めている間に、金融市場などがクラッシュし、契約締結後にご破算となるケースも存在します。キャッシュが入金されるまでは気を抜かずに最後までやり切る必要があります。

⑤PR

資金調達のリリースは、スタートアップにとって最もニュースバリューの高い話題の1つであり、各種メディアへの露出や人材採用においても、戦略的に効果的な打ち出しをするべきであります。

― 3. 資金調達後のガバナンス体制やレポーティング(VCとPEの違いなど)

投資家の属性によって、調達後のレポーティングが大きく異なるといったことはないですが、相対的にPEファンドの方がKPIなどの数字面については、より細かい粒度でのレポーティングが求められます。
またガバナンス体制については、リードVCであれば役員を1名派遣するといった条件を付けることも多いですが、PEファンドになると、基本的には取締役会の過半数を取りに行くケースが多く、また必要に応じて、常駐/半常駐のような形で人員が派遣されるケースもあります。その他、PEファンドの方が各種投資などの経営における意思決定についても、株主の事前承諾事項をより細かく規定するケースも少なくないです。
上記は一般的なケースであって、実際はPEファンドと一言で言っても、ファンドによって色は大きく異なります。PEファンドからの出資受け入れを検討する際には、ファンドや担当者のレピュテーションを調査しておくだけでなく、投資前の段階で特に重要な事項については契約書に規定するなどして、投資後にネガティブサプライズが発生しないための工夫を行っていく必要があります。

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