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【第6回】スタートアップCFOのその後のキャリアについて


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  • 2025.06.24
  • |2025-06-24更新

スタートアップのCFOは、資金調達やIPOM&Aなどといったファイナンス的な知見や経験は当然のことながら、スタートアップの経営陣の一角として、事業成長への貢献や組織拡大フェーズにおけるカルチャー作りなど、経営者としての側面もあり、非常に希少性の高い人材であることに疑う余地はありません。スタートアップでのCFOの経験を活かして、その後のキャリアをどのように築かれているのかについて、実際の事例も交えながら、紹介していきます。

 

― 1. スタートアップのCFOを経験することで得られるもの

 

ファイナンスやM&AIPOなどは、スタートアップのCFOでなくても、投資銀行やPEファンド、戦略コンサルなどでも、数多く経験することができます。一方で、筆者自身の体験としても強く感じたところですが、スタートアップのCFOとして働くことは、圧倒的な当事者意識が必要であり、自分の意思決定や行動が、そのスタートアップの事業拡大の成否に大きな影響を与えます。その過程で、得た知識や経験、スキル、ネットワークなどは、その後のキャリア形成においても、間違いなく大きな礎となっていきます。

また企業経営をしていくと誰しもが直面する困難として、ロジカルでもっともらしい戦略や戦術はいくらでも描くことはできるものの、それを実現するための実行プロセス(エグゼキューション)の方が圧倒的に難易度が高いということであります。自分1人でできることには限界があるため、多数の社内外の関係者を巻き込みながら進めていくこととなりますが、その過程で、強いリーダーシップ・人間力・胆力といったソフトスキルも鍛えられていきます。

 

 ― 2.CFOのその後のキャリア(事例)

 

他スタートアップのCFO

 IPOなどでのExit後に、他スタートアップのCFOに転身されるケースは数多く存在します。特にスタートアップのCFOとして培った資金調達に関するノウハウやネットワーク、IPO準備の経験を次の先でも存分に活かすことができるうえ、Exitにより一定の資産形成ができているケースでは、リスクを取った次のチャレンジを行いやすいとも言えます。

 

事例:

・newmo 武藤CFO(前プレイドCFO

・ファストドクター 中川CFO(前ココナラCFO

・enechain 藪内CFO(前paidy CFO

 

投資家

 CFOとして経営の一角を担い、事業や組織が拡大していくフェーズを経験することは、投資家としての目利きの観点でも、また投資後のバリューアップの観点でも、非常に有益な経験となります。投資を受けるスタートアップサイドの視点でも、実際にスタートアップのグロースフェーズに携わった方々から投資を受ける方が、投資後のサポートやコミュニケーションが円滑に進みやすいというような安心感を得られるということも期待できます。

 

事例:

・Minerva Growth Partners 長澤氏(前メルカリCFO

・Keyrock Capital Management 内河氏(前マネーフォワードCFO

・Goldman Sachs 松本氏(前SmartNews CFO

・ミダスキャピタル 寺田氏(前じげん CFO

 

CEOや他のロールへの転身

 CFOはその高度な仮説構築力や、特に複数プロダクトや事業を営む企業においては、いかに各種リソースを最適にアロケーションするかが最も大きな経営テーマであり、その観点では、CFOとしてのファイナンス思考が最も活きていきます。

 

事例:

・ラクスル 永見CEO

・フリー 東後CPO(退任済み)

 

その他

現状では、他スタートアップのCFOや投資家としてのキャリアに転じることが、最も事例としては多いように見受けられますが、それ以外にも、事例としては少ないですが、起業家として自身の会社を立ち上げるケースや、大企業のファイナンス責任者として手腕を振るう事例も存在します。

起業の事例としては、HQの坂本CEOが挙げられます。投資銀行やPEファンドでのキャリアを歩んだ後に、LITALICOCFOとしてIPOを実現し、その後、HQを立ち上げ、大型の資金調達も実現しています。

また大企業に転身した事例としては、森 暁彦氏が挙げられます。投資銀行でのキャリアの後にレノバのCFOとしてIPOを実現し、現在では、リクルートのファイナンス担当執行役員として活躍されています。

 

 ― 3.最後に(スタートアップCFOを目指す方々へのメッセージ)

 

 CFOとしてスタートアップで働くことの最大の醍醐味は、01のフェーズも、110のフェーズも、非常に大きな裁量を持ちながら推進していくことができることにあります。その過程においては、慢性的に何かしらのリソースが不足しており、時として自分自身がプレイヤーとして前線に立ちながら、物事を推進していく必要があり、辛いと感じる局面も少なくありませんが、否が応でも圧倒的な当事者意識を持つこととなり、様々なハードシングスを乗り越えていくことで、PEファンドや投資銀行、戦略コンサルなどでは味わえない、得難い経験を積むことができます。

日本のスタートアップ・エコシステム全体のことを考えても、様々なバックグラウンドを持った方々がスタートアップのCFOに転身して、IPOM&Aなどを実現したうえで、また違った形でスタートアップの経営やスタートアップへの投資に関与することによって、エコシステム全体としての厚みが増していくことも期待されます。

今回のコラムを通じて、少しでもスタートアップのCFOとしてのキャリアに興味・関心を持って頂き、実際にチャレンジしてくれる方々が増えてくれることを、心から願っています。