プロCFOインタビュー
Professional CFO Interview

会社の理念・社長の思いを守れるかどうかを一番に心がけ、
社長が考えていることをできる限り汲み、
それでもだめなところをしっかり伝える

株式会社識学
上級執行役員(CFO)
佐々木大祐様

2011年      大学在学中に公認会計士試験に合格
2012年4月 株式会社ソフトウェア・サービス入社
2013年9月 新日本有限責任監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)入所
2018年6月 株式会社チームスピリット入社
2019年5月 株式会社識学入社
2021年5月 株式会社識学 取締役経営推進部長就任
(31歳の若さでグロース上場企業CFOとなる)
※インタビュー時点(2023年5月時点)での内容となります。
実際の公開ページでは回答部分が閉じた状態で表示されます。
  • 監査法人としてのターニングポイント

    ― ご経歴と自己紹介について確認させてください。
    大学在学中に会計士試験に合格後、上場会社の経理スタッフとしてキャリアをスタートしました。その後、EY新日本有限責任監査法人へ転職し、IPO準備企業や上場企業の監査を行い、現場主査を6社ほど経験しました。約5年在籍した後に監査関与先(上場会社)へ転職をいたしました。その後、上場会社の経営企画部門の課長になり、そのあとに管理系の執行役員、取締役となっていった形です。

    ― どのような学生時代だったのでしょうか。
    高校生の間は部活動の軟式テニスに注力していました。顧問の先生がコーチ未経験だったので、自分の力で上手くなるしかありませんでした。指示されたことをやるだけではなく、自分と徹底的に向き合う姿勢を大切にしていました。負けず嫌いだったので、負けたときに悔しいと思うだけでなくどうしたら勝てるのか考えて、人の良いプレーを真似したり、自分の頭の中で組み立てながらどういう展開をするかを俯瞰的に見ながらプレーしてみるなどの工夫をしてきました。ストイック志向、物事を広い視野で全体的に把握して見る力というのは、社会人になった今でも活きていると思います。
    部活に注力する一方で、勉強をしなかった結果、志望していた大学には行けず、よくいる落ちこぼれのような学生だったかなと思います。相対的にみて偏差値が高いといわれる大学には行けなかった。将来についてどうしたらよいかわからず、人生を少し諦めていたような時期が長かったなというイメージです。
    その後、会計士という資格があることを知り、数学が苦手な自分でも、計算機が使えることでハードルの低さを感じ、取得に向けて猛勉強しました。「勉強」という部分でやり直しをするなら大学生の時間しかないという思いで、大学2年から大学4年の間、会計士試験を合格するまで毎日10時間~12時間ほど勉強していました。学歴コンプレックスへの悔しい気持ちと将来への恐怖心がここまでストイックになれた原動力だったのだと思います。

    ― ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか。
    監査法人に入ったときに、ただ言われた事だけ漫然とやっていた自分に対して「もうこの現場に来なくて良いよ」とその時の先輩に言われたことです。
    何となく監査法人という安定している職場に入社して安心していた自分を変えるターニングポイントになったと思っています。
    そこから「監査しているクライアントのビジネス・業界・トピックは監査チームの誰よりも詳しくなっていないといけない」、「会計・監査に関する六法をすべて暗記・理解してどういった相手であっても対等に話ができる状態にならないといけない」という2点を常に意識し始めました。
    ビジネスの実態をどのように会計に反映するか、それが基準に照らして妥当なのかというのが会計や監査の世界の大枠であると整理して、上記2点を常に意識し、実行していました。

    ― 在学中の会計士試験・合格、クライアントのビジネス理解で誰よりも詳しくなること・六法の暗記等そういった決断力や粘り強く取り組まれる力というのは何が原動力になられているのでしょうか。
    今までの人生で、基本的に「悔しい」と「挫折」が原動になっていると思います。また、周りの方に助けられたことが大きいです。
    監査法人に入ってすぐ、「もう来なくていいよ」「全然使えない」と言われたことが今でも強く思い出に残っています。それが悔しかったです。そんな状況の中でもいろいろサポートしてくれた先輩たちの存在が大きくて、自分は教わっているだけでいいのかと感じるようになりました。自分自身もレベルアップしないと「もう来なくていいよ」と言った人を見返せない、助けてくれた人にも恩返しできないし、自分も成長できない。今やるしかないと思いました。もう一回壁にぶち当たった感覚ですね。
  • 上場企業CFOを務めるまでの経緯

    ― CFOは元々目指してキャリアを形成されてきたのでしょうか。またそうであればどういった準備をされてきたのでしょうか。
    もともとは目指していなかったというのが本音です。いろいろ自分ができることをやっていった結果、そういう立場になっていたというのが正直なところです。
    今でも「肩書」の方が先行してしまっていて、本当の自分はまだ肩書に追い付いていないと思っています。ただ、その肩書に相応する職務を遂行できるように、自分ができる最大限の努力をしているのが現状です。
    意図的に準備をしてきたわけではないですが、監査法人で一定の経験を積み、事業会社での管理部門やIR、経営企画に近い業務の実務・マネジメントを経験してきたことで、結果としてCFOという肩書を与えてもらえるような人材になったのかなと思います。

    ― 現職に入社された経緯について確認させてください。
    下記の2点です。
    ①自分をより成長させることができるという点
    ②社長の人柄、目指すもの、目指すものの解像度の高さ、事業が目指しているものすべてに共感した点
    前職では組織になじめない、組織ってどんなふうに良くしていけばいいんだろうと悩んだことがありました。今までぴりっとした組織で働いたことがなく、識学は組織の規律を良くして成長させていくという考えがありました。
    識学の役員の方と食事をした際に組織について何も分かっていないと言われました。そこで挫折を経験し、自分は組織を運営するうえでの知識がないとわかりました。そこで入社させてくださいと門をたたいたのです。

    ― 佐々木様が若くして上場企業CFOを務める事が出来た秘訣・ポイントはどういった点だったのでしょうか。
    自分の努力もあるとは思うのですが、人とのめぐりあわせが本当によかったなと思います。
    厳しい指導や厳しい意見を言ってくれた先輩、年齢が若い自分に対していろいろ教えてくださった監査法人時代のクライアントの方、上場会社での上司の方々のおかげで成長できたというのが非常に強いので、出会った人たちに恵まれていたおかげだと思っています。

    ― とても謙虚ですね。周囲の方から意見をもらったり、いろいろ教えてもらえるのも一つの能力かと思うのですが、特に佐々木さんのどういった点がポイントになったと思われますか。
    自分ではなかなかわからないのですが・・・監査法人の先輩はすごく面倒見がよかったです。もらったアドバイスというのは自分に足りてないこと言ってくれているのだなと謙虚に受け入れる姿勢を常に持っていました。それが部下からだとしても謙虚に受けとめます。言いやすい環境をつくることも心がけています。
    アドバイス、意見も一つの情報であるので、どれだけ情報を収集できるのかも一つの強みになると思っています。
  • CFOの魅力

    ― 上場企業、またCFOの醍醐味・魅力はどういったものになりますでしょうか。
    上場企業という意味では、できるアクションも増えるため、上場企業になればなるほど関係者が増えます。例えば資金調達というアクションでも投資家の数も多ければ関連する証券会社もあってそのなかでいろんな経験を積めます。上場企業だとある程度の資金力もあるので、バックオフィスへの投資もできます。お金を使えばバジェットも増えるので、そんななかで試行錯誤できる。コーポレートアクションという意味ではいろんなことができるのが上場企業の強みですね。逆にスタートアップはバジェットないなかでどうやっていくかなので、バジェットがあるところを知っていると「これが最低限あればいいかな」というポイントを絞れます。上場企業を経験してから準備企業にいけたのはよかったなと思いますね。
    CFOについては、財務という面から自分が企画・立案して進んだ会社のコーポレートアクション、その後の成長に関与できることで、会社の成長を自分の経験として積める部分が魅力だと思います。

    ― CFOになるために、どういった経験・能力が必要とされていると感じますか。
    実務的な経験を除くと下記があるとよいのかなとは思っています。(CFO一人では何もできないので)
    ①人を巻き込んでプロジェクトを進める力
    ②ファクトベースでフェアに判断を行える力
    ③社長に対して本当にダメな時にダメと言える力
    ④会社が成長するために必要な要素を因数分解して、ストーリーを作れて説明できる。説明だけではなくて現場まで落とし込んで実現までもっていく胆力のある方

    ― 30代前半で評価者でもある上場企業創業社長に対してブレーキをかけなくてはいけない場面というのはかなり苦労もさられたのかなと思うのですが、佐々木さんはどのような事をその際心がけていらっしゃったのでしょうか。
    社長が考えていることをできる限り汲みながら、それでもだめなところをしっかり伝えることを心がけています。ただ否定するだけではなく代案も併せてきっぱりと伝えます。
    会社のためになるか、会社の理念・思いを守れるかどうかを一番に心がけています。

    ― これからの佐々木様自身の将来の展望についてはどういった事を想定されておりますでしょうか。
    子供が大きくなった時に、父親が何をやっているか、どういったことに貢献しているのか見せられるといいなという思いが強いです。だからこそ現職を選びました。

    ― 最後にCFO目指されている方にメッセージをお願いします。
    自分はCFOという肩書を意識していません。結局は、どういう役職だろうが、会社を大きく成長させるために、自分の能力を高めて力を発揮できるかということだと思います。それを一番責任強く求められるのがCxOや取締役。高い責任感を持ち、役割を務めらえるように日々研鑽していくことができれば、誰でもその立場になれると思います。自分も肩書を務めらえるような人間でなくちゃいけないと常に思っています。
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PE投資先は会社の成長・自身の成長を含め、そこに凄く本気な人が多い。その中で視野が広がり、ビジネスマンとして成長出来た。

(日本企業成長投資投資先)湯快リゾート株式会社
CFO
杉本真治様

2008年3月   神戸大学経済学部経済学科卒業
2008年4月 住友商事株式会社入社
2019年7月 株式会社エスネットワークス入社
2020年3月 (日本企業成長投資投資先)湯快リゾート株式会社入社 CFOを務める
※インタビュー時点(2023年6月時点)での内容となります。
実際の公開ページでは回答部分が閉じた状態で表示されます。
  • 漠然と会社経営に関わりたいと考えていた若手時代

    ― ご経歴と自己紹介について確認させてください
    大学卒業後、住友商事へ入社し経理部に配属。約11年所属しましたが、期間中は主に営業部門担当の経理業務を担当していました。また住友商事所属中には南アフリカへの駐在も経験し、現地での財務経理や一部人事総務に関する業務も経験することが出来ました。
    同社退職後は財務・経理分野のコンサルティングファームへ転職し、主にPEファンド投資先のPMIサポートに関する業務を担当した後、現職へと転職しました。


    ― ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか。
    仕事をする上で意識していた点は、大きく3点ありまして、考えていたことはごく当たり前のことなのかもしれませんが、今でも仕事を進める上での基本動作になっていると思っています。

    ・各業務のフローをただ覚えるのではなく、理由・背景を把握し、必ず押さえるべきポイントを理解すること
    ・インハウスのプロフェッショナル人材として、自身の担当しているビジネスについての構造や収益を生み出すポイントなどを確りと理解すること
    ・(会計分野が専門外の方など向けに)専門分野の説明をする際には、なるべく平易な分かり易い説明とすべく、ポイントを整理すること


    ― CFOは元々目指してキャリアを形成されてきたのでしょうか。またそうであればどういった準備をされてきたのでしょうか

    元々、特別に会計やファイナンス関連の知識知見があったわけではなく、住友商事での業務にて初めて触れたので、学生の時代からCFOというものを意識していたわけではありませんが、家業などの関係で会社経営というものは少し身近に存在しており、漠然と会社経営に関する仕事に関わりたいとは思っていたと思います。
    その中で財務経理のキャリアを経たことでCFOとしてのキャリアを意識するようになったと思います。特に入社6~8年目の海外にいたときですかね。本社にいた際は専門性を高めようと思っていた部分が、海外に行くとポジションが1個上になりました。
    個別論点でゴリゴリやるというよりマネージする側になったのもちょうどその時ぐらいかもしれないです。
    CFOを意識してからも特別な準備などはしていないのですが、自身のキャリアでの経験を棚卸し、自身がCFOとして働くことを想定した上で不足すると思われるスキルや経験は何か、それを補うためには何をすべきかということを整理しました。私の場合はそれが管理会計面(特にFP&A)だったため、自身で書籍を読み漁り、先輩や同業他社の方に確認しながら関連する情報収集や勝手に想定する会社ではこういう分析が必要かもしれないみたいなイメージをしていました。
  • 早いタイミングで挑戦したいと自ら手を挙げて飛び込んだ現職

    ― 現職に入社された経緯について確認させてください。
    実は現職はコンサルタント時代の担当クライアントなのですが、担当期間中にCFOの方が退職されてしまい、ポジションが空白となりました。コンサルタントへの転職時には将来のCFO職について意識しており、自身の目の前に挑戦できるチャンスがあるのであれば、早いタイミングで挑戦したいと思い、自ら手を挙げて入社を志願させて頂きました。結果的にファンドの方や会社マネジメント、前職(特にわがままを受け入れて頂き、ご迷惑をおかけしました)に挑戦を認めて頂き、入社に至りました。

    ― 総合商社からPE投資先に興味を持たれる方も直近増えている印象なのですが、総合商社のどういった経験が現職で活きていると感じますでしょうか。
    大きく2点あるかなと思っています。
    1点目が、グループ利益最大化のために事業会社にいながら、投資先の経営課題に複数部署を巻き込みながらも関与していく必要があるという点ではないかと思います。
    課題解決のTo Beに対して、実際のエクゼキューションを想定した場合の落とし所を探りながら複数部署の意見集約をしていくという経験は総合商社では実際に経験する機会が多く、PE投資先の企業内では特に経営システムの変更や改善をどんどん進めていく必要がありますので、どうやったら推し進めることが出来るのかを考え、実行できるポイントの擦り合わせを実施していくといった経験は重要だと思っています。
    2点目が、コミュニケーションの分かり易さだと思います。総合商社時代は業務を推進する上でのステークホルダーがかなり多く、且つ専門的な説明が必要な場面も多々あることから、説明はなるべく平易に行う必要がありました。現職でも同様のスタイルを継続したことで同じ理解に基づいた意思決定が出来たと思っています。


    ― 総合商社での投資先のバリューアップとPEファンドの投資先のバリューアップを経験されて異なる点はどういった事だと感じますでしょうか。
    コミットメントの差はあると思います。やはり総合商社の場合、単年度予算は追いかける一方、キャッシュフローまで含めた形で、コミットメントもできるかというと差があると感じます。もちろんそういう方もいらっしゃるとは思うのですが、ファンドさんのところはある意味そこで失敗すればトラックレコードが残りLPも集まらないとか、自身の報酬とかにすごく影響するというところがある。ミッドターム3~5年で経営改善に対する本気度というのは、やはり温度感として差はあるのではないかと感じます。商社の場合自分たちのルールにより忠実に沿って進めていくところはありますが、これはファンドさんのカラーにもよるかもしれないですが、アプローチは違えど最終的に結果が出ていけば、やり方はおまかせしますという形で柔軟に対応いただけたかなと思っています。

    ― 杉本様が若くしてPE投資先CFOを務める事が出来た秘訣・ポイントはどういった点だったのでしょうか。
    CFOのポジションは本当にタイミングが良かったと思っています。
    そのポジションを何とか務められたのは以下の3つのポイントだと思います。
    ① 自分の軸を確りと持って自身の意見を明確に伝えること
    ② 定量化出来る場合は数値的根拠を持つこと
    ③ NOの場合でも、その理由、どういったポイントをクリアすればOKとなるか明確にすること
    特にCFOは財務面を管理していることから、会社経営面での意思決定における発言については影響力が大きくなりがちだと思います。だからこそ意見に対する根拠や検討経緯や理由説明は丁寧に、且つ明確に伝達する責任があると思います。

    ― 良くファンド側と投資先との間で経営陣が板挟みになるケースが有ると伺いますが、どのように対応されてきたのでしょうか。

    初期の段階でいうと数値目標でどうしても折り合いがつかない部分も有り、その際、現実感のない数字を作ってしまうと、現場のやる気もなくなってしまう。そこの落としどころはどこかというコミュニケーションは丁寧に行うようにしていました。

    To株主という観点では、現実的に積み上げてロジカルに説明していくしかないというところで、納得させるようなコミュニケーションは取る必要がありました。
    私が所属した期間を通して考えると、株主さんに対して会社として抱えている問題などの事実はしっかりお伝えする。どういう人がどういうことを思っているかなど、会社は人が動かしてるので、もう少し人間模様じゃないですが、そういった部分もご理解いただくように心がけていました。特に私みたいな外部採用の人間と内部でマネジメントになってる方もいるので、その関係性ですね。その関係性で摩擦が起きたりはしがちだとは思うんですが、その辺りも含めてどういう状況か結構つまびらかに伝えるようにしていました。
    逆方向の話で言うと、プロパーの方に対してはファイナンス関連、契約や知識等のハードスキル面などについては、かいつまんでわかりやすく説明をするように心がけていました。

    ― 現職に着任された際、投資先社員の方たちと関係を築く際にどういった事を心がけてこられたのでしょうか。
    教えてくださいというスタンスで取り組んでいました。特にホテル業は私も経験が無かったですし、初めてで不明点も多かったので、そこは素直に分からないので教えてくださいというスタンスでいきます。一方で、こちらから専門性やハードスキルの部分で提供できることはします。ある程度、この人はスキルセットが伴っていてなんか会社の事業を分かってくれそうというのは感じてもらわなきゃいけないと思う。ハードスキルとソフトスキルの使い分けな気がします。私の専門分野である一般的な会計・財務面で判断が出来る話もありますが、もう少しビジネスに突っ込んで行くと理解が出来ていない部分がやはりありました。そういった私が不明瞭な部分に関して投資先の社員の方々は感覚的に理解しているので、その感覚の部分をしっかり教えてもらって、それを実際の数字に落とし込むとこんな感じだよねみたいな、そういうコミュニケーションは最初のうちにしっかりやっておかないといけない。
    最初は教えてくださいというスタンスで関係性を構築しつつも、早めにのタイミングでこの人ってビジネスに対する理解があるなというのも感じてもらわないといけないと思い、キャッチアップに対してはかなりスピード感をもって取り組んでいたと思います。
    さらに次のステップにいくためには汗をかくことも大事かと思っています。特に私が入ってから予算の制度をガラッと変える機会が有りました。ファクトベースでしっかり経営推進していきましょうという体制に社長以下で方針として出している中で、予算も過去のファクトベースで作りましょうと言うのは簡単なんですが、実際やってみるとやはりやり方がわからない部分はある。ここはそういう方針を出した手前自分も頑張ろうということで、それこそ各部署と一日中、朝から晩までずっと会議室にいるのが1週間2週間続くみたいなことをひたすらやりました。そうすると、翌年度になると、一緒に手を動かしながら社員の方も学び、精度が向上していく。会社のメンバーの成長が見れるのは自身の仕事の成果が目に見えますし、やっていて凄くよかったなと感じますし、会社のメンバーも自身の成長を感じることができ、そこまで一緒に汗をかくことで信頼を勝ち取れた部分もあるかなと思います。一方で、あの人はすごく数字に細かいしうるさいから怖いなと思われることも多分あったと思います。

    ― 日本企業成長投資(NIC)様については注目されているファンドの一つかと思うのですが投資先でやり取りをされてどういった印象を持たれましたか。
    会社マネジメントの意見を尊重しつつ、会社の経営改善、業績向上に資する取組であれば尊重、賛同、支援頂けるという印象を持ちました。ファンド投資期間における会社成長のみに縛られることなく、会社として長期の成長に向けた取り組みについてもご理解いただき、支援して頂いたと感じています。例えば、現職ではブランディングの部分になると思います。短期的には収益貢献があるかは定かではないですが、会社の長期的成長というところをサポート頂いたと感じます。
    加えて、投資先マネジメント陣とのコミュニケーションについては重要視されていると感じており、個々の成長についても後押し頂き私個人としては凄く成長できる機会を頂いたと思っています。具体的には、入社後2週間に1回CEO、ファンドのパートナーと担当の方3名で私のフォローアップも兼ねて機会を作っていただいた。またCEOも年に1回ファンド側から私のフィードバックを取って頂き、良かった点、要改善点を頂けとても有難く感じました。

  • マネジメントのチームワークで乗り越えたコロナ対応

    ― PE投資先CFOの醍醐味・魅力はどういったものになりますでしょうか。
    ファンド投資先だからというのはあるかもしれませんが、特にCFOに情報が集まりやすく、それをどう料理するか自分の腕次第という点です。またLBOローン等でファイナンス契約を理解して、事業会社の数字含めた数字コントロールをしなきゃいけないという、がんじがらめの中で泳げるとこはどこだろうと探す点です。それを自身が理解しているというちょっと特別な感じはあるのかなという気はしています。

    ― PE投資先CFOを務められて特に苦労された点はどういった事だったのでしょうか。またどのようにそれを乗り越えられたのでしょうか。
    20年の3月に入社し、コロナ渦で全館休業になった際の資金繰りです。そのときにどう乗り越えたかというと、これまさにマネジメントのチームワークでしかないと思っています。  
    ただ、そこには情報の非対称性があってはいけない。そこで2年分ぐらいの資金繰り予測を作り込んで、5月全館休館したらこれぐらいのお金が減っています、このまま続くと、もうここで資金ショートしますというところまではっきり伝えました。そのためには、コスト削減を含めてみんなである程度の痛みも伴う必要がありますよと。例えばボーナスをなくすだとか、リストラを実施しなくてはいけない状況になるかもしれないと。ただ、そこはしたくないので、まずはできることで、みんなでコスト削減のできるところをやっていこうとか、休業して仕事がなくなってしまいますが休業補償でお休みいただく方等含め理解をみんなで得るためにしっかり動いていこうだとか。乗り越えるためにはある程度情報は隠してはいけないと感じました。
    マネジメントに隠すことなく会社の財務状況をすべてこうなってますと伝えるのがファーストステップだったと思っていて、その次にレンダーさんでした。特にレンダーさんとのコミュニケーションは苦労しました。レンダーさんに、こういう状況なんでもう支えてくださいって話をしなくてはいけないのですが、我々はもう会社でできることはこういうことがあって、これぐらいまで会社としてコストを削ります。一方で、コロナが収束することは絶対収束するとは思うんですが、そのタイミングで元に戻れない会社になっちゃいけないっていうのが重要なポイントかと思っていて、元に戻るために人は絶対残したいですと、あるいは施設売却するなんてもってのほかというところで、収益基盤はしっかり残させてください、ただその範囲内で削れる部分は削ります、それを仮にやってアフターコロナだったらこういう数字出しますという、将来計画の作成だったり、全社的なコスト削減プロジェクト計画を短期的に情報を集めて作り、説明していくという、まさにCFOの腕の見せ所なんだと思います。そういったところを結構短期的にガーッとやらなきゃいけなかったので、特にコロナの最初の初動は、すごく大変でした。


    ― 杉本様の将来の展望についてはどういった事を想定されておりますでしょうか。
    引き続き経営に対する知識知見を増やしていきたいと思っています。
    その中で、現状に満足することなく経験したことのない新たなことにも挑戦して自身の可能性を広げていきたいですね。


    ― 最後にPE投資先CFO目指されている方・関心を持たれている方にメッセージをお願いします
    ファンド投資先と一口に言っても様々だとは思うのですが、ただ総じて言えるのは、関わっているメンバー、特にマネジメントメンバーは、会社の成長だったり、自身の成長を含め、そこにすごく本気な人が多い。会社の成長に対してコミットメントしてる人たちというのがプロパーの方も含めて、私は今の環境はそういう人たちしかほぼいないという感じで、成長できる環境はすごくあったのではないかと感じています。
    自身も3年半~4年ぐらい関わっていますが、その中で視野が広がったり、自分の中でビジネスマンとしては成長できたんじゃないかなと感じていますし、そういうメンバーが集まってくるというか、いろんなバックグラウンドの人がいて、ただ目指すのは会社の成長というところでいろんな知恵を出し合って、そんな視点もあるんだっていうのはすごく感じているポイントかと思います。管理部門だと例えばさっきの予算の話で、数字を作っていくとかその管理精度の向上だったりはすぐ目に見えるので、自分のやった成果や自分の成長が目に見えるという意味では、面白い環境なんじゃないと思います。そういうのを楽しめる方なのであれば、すごく面白い場所なんじゃないかと。
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PE投資先CFOはいかにビジネスモデル、競争源泉、バリューチェーンを理解し、リアルに利益を極大化させるメカニズムを動かすかが求められる

(元カーライル投資先、現DCapital投資先)株式会社おやつカンパニー
常務執行役員CFO 経営管理本部長
西村裕治様

1990年4月 野崎産業株式会社入社
1999年4月 川鉄商事株式会社(野崎産業との合弁により)入社
2002年3月 株式会社アッカ・ネットワークス入社
2008年7月 株式会社ウィルコム入社(カーライル投資先)
2011年1月 株式会社キトー入社
2017年10月 イチボシ株式会社入社(アドバンテッジパートナーズ投資先)
2019年9月 株式会社おやつカンパニー(カーライル投資先、2022年よりDCapital投資先に)
※インタビュー時(2023年7月時点)での内容となります。
実際の公開ページでは回答部分が閉じた状態で表示されます。
  • 「仕事場で充実感を得ている人」という人物像を思い描き独学を積み重ねた若手時代

    ― ご経歴と自己紹介について確認させてください。
    企業統合による所属変更を入れると現職まで7社と、一般常識から見ると多い会社歴ですね。業種では商社、通信、メーカーの3種それぞれ約10年ずつ、職種で財務・会計、経営企画、海外事業推進の3種に分けられます。
    若手時代から一貫して有しているベース・スキルはファイナンス・アカウンティング領域のものです。ファイナンス関連業務では、商社入社直後の金融商品運用部門への配属がきっかけで、為替のトレーディング等、金融市場取引も経験するなど、一般事業会社では得られない異色の知識と経験を持っていると思います。
    その後、ブロードバンド通信ベンチャー、携帯キャリア、産業機械メーカー、食品メーカーでの経営企画に加え、海外事業(東南アジア、カナダ)エグゼキュ―ションを担うことでコーポレート関連業務を超えて事業推進現場での経験を積んできました。
    就業ロケーションとしては、商社、メーカー時代に米国、タイ、インドの現地法人に出向。文化、価値観の異なる現地従業員、マネジメントとの事業推進の実績を積んできました。特に彼らのあまり文書化されていないかつ、暗黙の了解になっているようなルールだとか常識だとか、価値観というのをできるだけ早く汲み取っていくという姿勢は、投資先でのマネジメントにも活きている部分があります。
    30代半ばに通信業界へ移ってから、PEファンドとのコミュニケーションが始まり、現在に至るまで、色々縁があって今のディ-・キャピタル社傘下の現職に至っています。
    それぞれの転職において常に何か自身の新たな可能性を求めていましたが、若かりし頃のそれは、正直、入念に環境を見極め、明確な将来像を描きながらのものではなかったような気がします。
    しかしながら、結果としてこれら複数の会社での異なる役割を実地で経験できたことで、幅広い知識と経験を積むことになり、ビジネスパーソンとして差別化されたスキルが構築されたと思っています。


    ― ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか。

    振り返ってみると20代の私は、とにかく「仕事ができる人」、「仕事場で充実感を得ている人」という人物像を思い描いていたように思います。人目につかないところで、こっそり書籍を買いあさって自宅(当時は会社の寮)でコツコツ勉強していましたね。 当時の職務であった外国為替取引に関する本を買って学習していました。インターネットもない時代でしたので、書籍が頼り。周囲に専門的な知識を持っている人も少なかったので、今は亡き八重洲ブックセンターへ数知れず通っていました。当時所属していた商社は、仕入の9割近くは輸入という状況でしたので、国際金融取引が事業運営に必須でしたし、この分野の金融理論って結構実際に業務やってない人にとってはとっつきにくい分野でもあるので、若手時代から社内各部門から種々相談が寄せられるようになりました。
    商社時代、ほぼ3年周期で転勤等、環境変化があったことも、若手時代にあった重要なイベントであったと思います。商社入社後、東京本社 金融商品部門、大阪支店財務経理部、米国現地法人ニューヨーク本社出向、同社アカウンティング、帰国後、他商社との合併、財務経理部という経緯です。中でも20代でニューヨーク マンハッタンの事務所で働く機会を得たことは当時の私には大きな刺激と仕事に打ち込むモチベーションに繋がりました。



    ― PEファンドとの出会いはどういったものだったのでしょうか。またどういう点に惹かれ、PE投資先にジョインされたのでしょうか。
    最初の出会いは通信ベンチャーに転職した時です。同社の副社長のネットワークに多くの大手金融、ファンドの方がおり、M&Aを含む各種資本政策検討の折、PEファンドとのコミュニケーションが始まりました。
    その後、転職検討時にエージェントより紹介された会社が、以前接点のあった大手PEファンドの投資先だったのです。ファンド側の責任者(MD)とも既に面識があったので、とんとん拍子に同社採用となったことが、PEファンドとのかかわりを深くするきっかけとなりました。一方、同社は事業で不調の部分も有り、その際の株主とマネジメントとのコミュニケーションは非常に難しいものだと感じました。案件も大きく、非常にタイトな時間軸の中でのプレッシャーは想像以上でした。
    PEファンド傘下企業の営みは、一般事業会社のそれとは大きく異なります。
    会社はあくまで投資対象であり、PEファンドは一定期間後、自らの持分を何らかの方法で譲渡し利益を得ることを使命とされた主体です。彼らは投資実行以後、対象会社と様々な取り組みを実践し、対象会社の企業価値を高めることで、自身の利益を獲得するとともに、対象会社のゴーイングコンサーン要件を整え、雇用、取引先、債権者、納税を守ることに繋げています。
    この意義深い大事業を進めるためには、資本家の論理だけでは成しえません。誰かが投資家と対象会社の間に立ち、オペレーションの現場を動かしていく必要があります。この役割の一端を担う能力を有するものがPEファンド傘下企業の営みに求められています。そんな一人にたまたま選ばれたということです。
  • バリューチェーンとプロセスごとのキーマンに早期にアクセスし、ビジネスモデルの理解に基づくアクションと、そのフォローアップのスピードを重視

    ― 現職の業務内容について確認させてください
    常務執行役員CFO 経営管理本部長として、全社経営戦略の立案・推進、重要経営課題のプロジェクト運営等を行っています。業務分掌の垣根は意識せず、やれることはすべて対応するというスタンスで日々の業務を行っています。
    あえて具体的な業務内容を上げるとすれば、

    ■ コーポレート関連では、
    ・ 年度予算及び中期経営計画の策定、
    ・ 将来資本政策へ向けた準備(国際会計基準IFRSへの対応準備、財務報告体制強化、社内規程の整備運用、JSOX対応準備)
    ・ グループ資金計画立案・管理・運営
    ・ 会計監査計画立案・実行
    ・ 株主・債権者対応
    ・ 海外子会社の財務運営サポート、

    ■ 事業企画に関しては、
    ・ 過去に会社が行ったことのない事業やプロジェクトの立ち上げ、推進、
    ・ 機能部門起案施策の評価・企画支援

    特に一般的な事業会社のCFO業務と比べてカバー範囲が広いと感じるのは業務プロセスの改善活動ですね。ファンド傘下の企業だと私はメーカーを中心としてきていますが業務プロセス、内部のバリューチェーンの効率化という部分はかなり大きいものがあると感じておりそこに着目しています。業務プロセスがどういった単位で構成されていてそこをどういう人がコントロールしていくかという事を自分で把握する、その上で出てくるアウトプットを数値化、効率化、改善阻害要因は何かという事をメンバーと共有をして成果として出していく。
    例えば、前職はイチボシという水産加工業の企業におり、カナダ産のズワイガニを製品化することがその企業の事業モデルでした。その歩留まりというのが非常に重要な指標と捉えており、例えばどういった漁師といつ契約するのか、どのくらいの量を行うのか、それがどういった単価になるのかといった、原料の調達から製品化、在庫の管理までの一貫したバリューチェーンの最適化を行ってきた。その部分の感覚やアプローチ、現場の方々とのコミュニケーションをまず大事にしてきました。そういった部分がファンドが求めるCFOだけではなく、対象企業がマネジメントに求めるところと感じており、ファンドとのコラボレーションが続いている要因ではないかと思っています。


    ― PEファンド投資先での豊富なご経験をされてきておりますが、外資系ファンド、日系ファンド、新興ファンドでどういった違いを感じておりますでしょうか。
    外資/日系、新興ファンドという括りで、その違いを類型化することはなかなか難しいのですが、各PEファンドの後ろ盾となっているもの(投資家)が誰なのか、それがどういう意図を持って金主となっているのかは、大枠としてPEファンドの行動を左右すると思います。例えば、投資家の中に公的な立場の人が入っている場合、EXITの方向性というのは比較的定まってくると感じています。日本の産業の育成や産業の活性化を掲げている場合、そこにつながるExitの仕方というのが恐らく求められているのではないかと思うので、そこに向けたマネジメントプレゼンテーションなどを作成します。 
    しかしながら、同じファンドであったとしても、担当MDとチーム、対象会社の状況(現在のコアコンピテンシーと課題)、エグジット方針(財務ターゲットと持分譲渡方法)によっても接し方が違ってくると思いますので、それぞれの事案がどういう環境の中で取り扱われているのかを俯瞰的に見極める必要があると思います。
    私の足元に立ち返れば、現職中にPEファンドが入れ替わるイベントがあったわけですが、当社のバリューアップアプローチに大きな変更はありません。
    現在コラボしているディ-・キャピタル社は、メンバーの若さもあり、そのフットワークの良さを活かし、より細かなサポートを提供してくれている印象があります。


    ― 西村様が多くのファンド投資先でご活躍されてきた秘訣、評価されたポイントはどういった点だったのでしょうか。
    対象会社のバリューチェーンとプロセスごとのキーマンに早期にアクセスし、ビジネスモデルの理解に基づくアクションと、そのフォローアップのスピードがファンドの普遍的な価値観にフィットしているということかと思います。プロセスごとのキーマンについては、はじめ部門長とコミュニケーションを取り、その後深堀していく中で出てくるケースが多いです。そうなったら、それ以降直接業務の中で話す人はキーマンの人という形になります。
    また、これまでのファンドとのコラボ経験から、投資ファンドとのコミュニケーションに慣れていることもありますね。 一般事業会社 管理部門経験のみの方は、相手がファンドとなると構えてしまい、どのように彼らとの接点を持てばよいのか、会社側マネジメントとのハブとしてどのように振舞えばよいのか等解らずに、適時・適切な情報共有ができないことがあり、意思決定の阻害要因になるケースがあります。
    ファンドの意図と背景の理解(どういうレベルのリターンを意図しているのか、そのためのイグジットシナリオはどのようなものか、彼らの投資家とどのようなコミュニケーションがなされているのか等)、事業環境と課題理解力(対象会社のビジネスモデルとバリューチェーンの理解)、課題解決企画力(根本課題の所在とタイムスケールを伴うソリューション企画)、対象会社内及び社外関係者とのコミュニケーション力(社内外関係者との信頼関係の有無)、結果の可視化力(高優先課題とアクション、その期待値とリスク評価等のレポーティング)が必要でしょうね。


    ― ディー・キャピタルについては「DXxPE」をコンセプトにしており、業界でも注目されているファンドの一つかと思うのですが投資先でやり取りをされてどういった印象を持たれていますか。またディー・キャピタル投資先で働く魅力について確認させてください。
    一言でいうと、「構えずフットワークよく働く集団」という印象です。
    ディー・キャピタル社内のIT課題対応力に加え、社外のネットワークを活かした企画・提案力があると思います。
    現職においては、攻め(ECビジネス等)・守り(製販調整・在庫管理システム刷新等)でのDXニーズがありますが、ディ-・キャピタル社は資本参加当初より積極的に現業部門とコミュニケーションを図り、事業推進をサポートしてくれています。
    同ファンドは会社として若いだけでなく、代表以下総じて若い人材で構成されています。これによるファンドとしての機動力は極めて高いものを感じます。前述の現業部門とのコミュニケーションが普通のこととして実施され、レイヤードされていない、フラットなコミュニケーションが進められるチームことが、この機動力を生んでいると思います。
    あまり大きな声では言えませんが、時間帯の区別なく発信される私からの照会にも彼らからは速やかにレスが返ってきます。「コロナ禍」を契機に、リモートワークが巷では常識になっていますが、即時レスポンスの有無は、デジタルワークスタイルにおける効率性に密接に関係しており、リモートワークに非効率性を感じる会社はこの部分の欠落(もしくは不十分性)が一因と思いますが、同ファンドとの間には全く問題を感じません。令和日本のビジネスタイルを彼らとは体現できています。
  • PE投資先CFOの醍醐味、大切にしている価値観

    ― PE投資先CFOの醍醐味・魅力はどういったものになりますでしょうか。また事業会社CFOとの違いをどのように感じられておりますでしょうか。
    期待される役割に大きな違いがあると思います。
    一般事業会社におけるCFOも実質的に非常に重要な役割を担っていますが、PEファンド傘下企業のそれに比較すると期待される役割の幅が多少狭くなり、責任範囲がコーポレートイシューに限定される印象を持っています(これは必然であり、どちらが良いというものではありませんが)。
    一方、ファンド傘下でのCFOはファンド側の価値観を強く共有・意識し行動することが必要で、より戦略的な意思決定にも参加できるフィールドを与えられている(同時に期待されている)と思います。ここが一般事業会社CFOとの違いであり、醍醐味を感じる根本といっていいと思います。
    また、ファンド傘下でのCFOは時間軸が明確にあります。一般的なところで言うと5年程度のスパンでExitを目標にするので、Exitできるような環境を作ります。そういう意味でも、CxO、特にCFOは投資家側から見てより責任・権限が与えられると思います。
    PEファンドが投資対象とする企業は、すべからく何等かの競争源泉(コアコンピテンシー)を有していますが、様々な理由によりそれが存分に生かせていない企業です。様々な事業阻害理由を取り除いたり、コアコンピテンシーをさらに活かして成長を図ったりすることがファンドの目的である投資リターンを生むことになります。CFOはその立場を活かし、ファンドの立ち位置からさらに踏み込み、個々のオペレーション、プロジェクトの企画、評価、管理を行っていくことになります。
    同環境下での経営推進の視点で持論を交えて言いますと、その方法論検討の段階において、ベストプラクティスと言い、他社の成功事例を持ち込むことに私は賛成の立場ではありません。各社において固有の事情があることを考慮した政策判断が成功確率を上げると私は経験上考えています。そこで会社所属の人間であり、個社のビジネスモデルとバリューチェーンを理解し、ファンドの意向も熟知するCFOが会社とファンドの間に立って政策判断を調整する要として活躍する機会が訪れると考えています。
    また、ファンド投資対象会社の多くは中堅企業以下の規模です。つまり、業界には対象会社を上回る規模の競合他社が存在するケースがほとんどですので、その環境下での競争戦略はやはり弱者の戦略になることが多いです。ターゲットセグメンテーションとそれに対するリソースの集中投下が重要で、そのPDCAをいかに高回転で回せるかが投資ファンド傘下企業の成長の決め手となると思います。結果、大企業では成しえない小回りの利いた施策の打ち出しの連続が厳しい環境下での競争を可能にすることと思います。そのような意思決定メカニズムをCFO自らが企画・構築し、推進していくのです。彼らファンドも限られた時間内で成果を出したいので、その迅速なPDCAプロセスには共感し、支援をしてくれるでしょう。会社によっては長年慣れ親しんだ風土や慣習で、実質的な意思決定メカニズムの変革が難しいケースがありますが、PEファンド傘下では、彼らファンドの外的要請等をうまく生かすことで、変革可能な場合が多いと思います。うまくいけば、成果が見えにくい管理部門のプレゼンスが高まり、メンバーのやる気を引き出していくことにもつながっていくと思います。
    更にPEファンドとの取り組みの後に残るもので最も大きなものは会社経営としての感性とノウハウといっても過言ではないと思います。もちろん、CEOのように幅広い業界ネットワークと業界知識を持って全社を牽引する担い手ではありませんが、会社をどのように運営していけばよいのか、CEOをどのように補佐し、その他のステークホルダーとの関係を維持し、会社を運営していけばよいかという総合的な経営者能力を比較的早期に獲得できるのではないかと思います。上場大企業ではおそらくこのような結果を得ることは容易ではないでしょう。投資対象会社にはビジョンはあるか、短期の目標の積み重ね、重ね設備投資やブランド投資を行う。結局やりたい人にはやらせていきたい。


    ― PE投資先では勤務を開始される際にどういった事からスタートされるのでしょうか。
    会社文化やルール等を身に着けるという意味で、投資先の経営陣・社員との関係構築、はもちろん同時にこちらから働きかける事も行います。特にファンドの方々とのコミュニケーションは最初からロケットスタートです。そこに何も配慮もいらないので、最初の頃からリアルな方向性、課題認識を共有するようにします。また私の希望もできる限り早くから伝えるようにします。ファンドの方々は何の配慮もなくできる人達だと考えています。


    ― PE投資先のCFOはファンド側と投資先とのコミュニケーションハブになる事もあると思いますが、その際西村さんはどういった事を心がけているのでしょうか。
    長期的なビジョンというのはあると思うんですけれども、その長期的なターゲットに対してどのように今やるかっていうことについては、むしろその短期の戦略の積み重ねによってしかそれはできないと思っています。それで言うと、ファンド側の持つ意向とそれに沿ったプランっていうのは、実はそんなに相いれないものじゃないっていうふうに思っていますのでそういうその視野に立って、戦略を立てて、コミュニケーションをします。

    ― PE投資先CFOを務められて特に苦労された点はどういった事だったのでしょうか。またどのようにそれを乗り越えられたのでしょうか。
    PEファンドとのコラボを始めた当初(通信ベンチャー時代)は、対象会社の現場責任者との信頼関係構築に苦労しました。やはり事業はオペレーションの現場で実行されていますから、いくらファイナンス理論や管理会計で事業の実態を可視化できたところで、オペレーションの現場を押さえないと(ビジネスモデルと社内バリューチェーンの理解とそれを司るキーマンとの信頼関係構築)、自身の主張に説得力がないなと感じていました。そこで、オペレーション現場のキーマン(必ずしも担当役員とは限らない)を見つけ出し、その人とのコミュニケーションを密にし、信頼関係を構築することで、事業計画にも説得力を持たせることができるようになりましたし、結果として現業部門担当役員との信頼関係にもつながっていきました。
    各機能部門との関係構築の方法論としては、各部門によるマネジメント報告や、ルーチンワーク以外のプロジェクト推進支援が取っ掛かりとしては良いでしょう。 
    具体的には各部門ごとのミッションを私ならではの視点でバックアップするという形です。部門の人たちがマネジメントや株主に向かって話すという事をサポートする形にし、彼らの成果としてできるもしくはモチベーションに繋がるような形でサポートすることにより関係構築できると感じています。これにより部門長のみならず、現場のキーマンとの関係も構築でき、かつCFO自身の自社バリューチェーンの理解が深まり、自身の戦略立案能力の強化につながります。このアプローチにはそれなりの自身のワークロードを割かなくてはならず、体力消耗が伴いますが、根気よく実施することで、確実に仕事の成果につながっていきます。


    ― 西村様の今後の展望についてはどういった事を考えておりますでしょうか。
    今年の1月の株主交代イベントで、PEファンドとのコラボによる私のCFO業ノウハウは完成された感覚を持っています。
    対象会社固有のビジネスモデル、バリューチェーン把握、それを活かした中期的企業価値向上計画の立案・実行・管理、トレードセール・株式公開等のイグジットシナリオの立案と実行、ファンドイグジット後の新体制移行手続きといった一貫したプロセスを遂行するための知識と経験が複数ファンド傘下企業での経験によって自信をもって遂行できる状況になったということですね。私のこのスキルはメーカー案件で成果を最大化するものと理解しています。
    足元に立ち返ると、ディ-・キャピタル社とのコラボレーションが始まったばかり。まずはこの会社を彼らとどのようにバリューアップさせていくかが私の頭の中の大部分を占めています。環境変化に、臨機応変に対応できる準備を整えつつ、目の前のミッションを確実にこなしていきたいですね。それが私自身の存在価値の向上にもつながると思っています。

    ― 最後にPE投資先CFO目指されている方・関心を持たれている方にメッセージをお願いします。
    PEファンド傘下企業CFOの役割は、その対象企業により様々ですが、先ず言えることは、このポジションは単なる財務・会計のスペシャリストでは十分な成果は出せないということです。
    いかにビジネスモデル、競争源泉、バリューチェーンを理解し、リアルに利益を極大化させるメカニズムを動かすかが求められることとなります。
    そのための労力を惜しまずやって、成果を出せたとき、きっと自立心の高い皆さんはこの上ない充実感を味合うことになるでしょう。自立心が強く、コーポレート分野で強い強みを持ちつつも、所属組織の文化・風土、そのほか様々なしがらみで十分に能力を発揮できていないと思われる方は、PEファンドとのコラボレーションを一考してみてはいかがでしょうか。この分野の経験を積むことで、その後のご自身のブランド価値は確実に高まり、選択肢も広がってくることでしょう。
    最後に、メンタル・フィジカルのタフさを求められるポジションでもありますので、是非、普段の生活でのセルフコントロールを心掛け、心身ともに健全な状態でご自身の目標に向け進んでもらいたいと思います。
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上場を本気で目指されたい方に、ファンド傘下の企業は有力な選択肢の一つ

(アドバンテッジパートナーズ投資先・2023年7月グロース市場上場)
㈱ナレルグループ

取締役コーポレート本部長
野尻悠太様

2006年4月   みずほ証券入社(インベストメントバンキングプロダクツグループ)
2009年11月 ㈱アクセルスペース入社(取締役COO)
2019年4月  ㈱JDSC入社(CFO)
2020年5月     ㈱ナレルグループ入社(取締役コーポレート本部長)
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  • 「自分が人生でやりたいことをやる」ということを判断軸に決断してきた若手時代

    ― ご経歴と自己紹介について確認させてください。
    大学・大学院では航空宇宙を専攻し、金融を通じてダイナミックに仕事が出来そうというイメージを持った事からみずほ証券に入り投資銀行業務に従事しました。
    その後、宇宙スタートアップのアクセルスペースにてCFO、COO等を歴任し、AIスタートアップのJDSCを経て、2020年にワールドコーポレーション(ナレルグループの事業子会社)に管理本部長として入社しました。その後持株会社体制への移行に伴い、ナレルグループの取締役コーポレート本部長を務めています。

    ― ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか。

    証券会社に約3年半勤務したのち、20代でスタートアップに転職していますが、そのときも自分が人生でやりたいことをやるということを判断軸に決断をしました。
    これは、最後にあとで人生を振り返ったときにやりたいことをやれたか、やらずに後悔するよりやって後悔の方がいいかなという風に思った事、大学の研究所の2個上の先輩が作った会社でアクセルスペースという場はすごい面白いと感じた事から飛び込んだという感じです。
    当時は良くも悪くもリスクに対して鈍かった、何とかなるみたいなそういう楽観的な部分と、その当時の技術の可能性については自分がよくわかっている分野だったのでリスクを取りやすかったのかもしれないです。

  • PEファンド投資先とスタートアップベンチャーCFOの違い

    ― PEファンド投資先とスタートアップベンチャーでのCFO経験が有られますがCFOを務める際どういった違い、魅力があると感じますでしょうか
    スタートアップでは、ジョインする時期にもよりますが、会社が小さな時期から会社と共に成長し、ダイナミズムを感じることができると思います。また、エクイティ調達も行う必要があり、PE投資先ではできない経験をすることができることも魅力かと思います。特にエクイティでの調達については、能動的にビジネスプランを作り、市場に何をプロダクトとして提供するか明確化して、市場の分析を行い、その中でどういった自社の強みがあるのかを明確化、組織、プロダクト開発、事業をどう成長させるかという非連続的な成長のプロセスを描くのは醍醐味かと思います。
    一方で、PE投資先には、そういったダイナミックな側面はあまりありませんが、その性質上、現状のままで居続けることが許されるわけではなく、事業変革・事業成長が強く求められます。PE投資先となるような一定規模以上の成熟企業で事業成長を推進するCFOを務めるということは、スタートアップとはまた異なる経験が積めることが魅力かと思います。
    また、PE投資先の方がファンドへのレポーティングについても、事業が成熟していることもあり、KPIも細かく分析し改善をしていたという印象はあるかもしれないです。


    ― スタートアップとファンド投資先の違いという部分についてもお話頂きましたが、特にどういう方がファンド投資先にフィットしやすいと感じますでしょうか
    結構スタートアップって、ジョインするには個人的な感想として熱狂というか、そういったようなものがないと、とても飛び込めないっていうのはあるような気もしていて、それよりかはどちらかというと、自分のスキルとか能力がどういう場で活かせるのかとか、必要としてもらえるのかっていう、職人気質的なところがある方の方が向いてるかもしれないです。
    もちろん対象会社のビジネスに対して興味を持つっていうのは必要ですが、スタートアップほどの熱狂的な共感は求められはしないので、自分の能力がどう生かせるかというところに興味があるとフィットしやすいかもしれないです。

  • PEファンド投資先での上場準備

    ― 現職の主な業務内容について確認させてください。
    コーポレート本部長として、経理・財務のみならず、人事総務、法務、IT等幅広い管理部門を管掌しています。

    ― 現職で上場準備を行う中で、最も困難だったことは何だったのでしょうか
    また、どのように乗り越えたのでしょうか

    正直なところ非常に辛かったということはありませんでした。社内も上場準備に協力的でしたし、プロジェクトメンバーにも恵まれ、主幹事証券も会社に寄り添って対応いただけました。そのおかげで、一つ一つ課題を着実にこなすことができ、非常にスムーズに上場準備を行うことができ、当初のスケジュールから全く遅れることなく、上場することができました。
    ただ各部門間との連携が必要なタイミングや、各部門に負担をかけなくてはいけない際は、しっかり根回しを意識していました。こちら側から一方的に落とすというのはご法度で、関連部署のキーパーソンと会話をして、理解を得つつ進めるという部分に気を遣っていました。
    また、主幹事証券会社・監査法人ともコミュニケーションをする際は、バットニュースは先に伝えるようにし、また風通しもよく情報をオープンにして積極的に協力してもらえるように心がけていました。


    ― 上場を達成された際の率直な感想をお聞かせください
    社内が大きく変わるわけではないので、それほど実感はありません。上場したとしても会社の事業成長に合わせた内部管理体制の運用・構築等は引続き実施する必要がありますし、IR等、新しい業務も発生していますので、息つく暇がないというのが率直な感想です。

    ― 上場準備を進める中でファンド側からはサポートは有ったのでしょうか。また有ればどういったサポートだったのでしょうか
    実務については会社側にかなり任せていただいていましたので、人材採用のサポートやファンド内に蓄積した過去のIPO案件等の経験を踏まえたエクイティストーリー構築、バリュエーション決定、ロードショー運営等のプロセスにおいて、アドバイス・サポートいただきました。

    ― 上場を志向する場合、ファンド傘下でのCFOという選択肢はどういった魅力があると感じますでしょうか
    PEファンドの投資対象となるということは一定規模かつ少なくとも安定的な売上・利益があるケースが多いと思います。それでもなお、収益拡大は重要な課題ですが、業績によって上場の見通しが全く立たないということはないので、ある程度、それ以外の上場準備に集中できるという魅力があると思います。そういった意味で上場を本気で目指されたい方にはファンド傘下の企業は有力な選択肢の一つとなるのではないかと思います。

    ― 現職では、創業者さんも在籍されてきたと存じますが、創業者さんとファンドさんとの間を取り持つ部分にご苦労は無かったのでしょうか?
    創業者である代表取締役からファンドとしてはどういうことを考えているのか等は聞かれることもありますし、こうしたら良いんじゃないですか、という事も伝えていました。ファンド側としてどういう出方が出来るのか予想しつつある程度の着地点は見据えて予期しながらもうまく調整していくという部分はやっていたかもしれないです。

    ― アドバンテッジパートナーズについては投資先側で勤務する中でどういった印象を持たれましたでしょうか
    APの投資チームの方々は、合理的かつサポーティブでしたので、仕事は進めやすかったと思います。大株主としてのAPと会社の間で必ずしも利害が一致しないこともあったかと思いますが、会社側の意思も尊重いただき、上場に向けて非常に良い関係の中で進めることができたことに感謝しています。


    ― 最後にPE投資先CFO目指されている方・関心を持たれている方にメッセージをお願いします
    前に述べたとおり、PE投資先のCFOはスタートアップとはまた違った魅力があると思います。どういったキャリアを歩むかはそれぞれの価値判断かと思いますし、PE投資先はスタートアップに比べると知名度の低いキャリアパスであるのが現状かと思いますが、少しでも魅力を感じられたのであれば是非ともチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
    特にプロ経営者的なキャリアの最初の登竜門として、PE投資先は適しているのではないか、またそうあってほしいなと感じています。まがりなりにも私も上場企業の取締役CFOを務めているわけですが、日本に上場企業は数千社ありますが役員の方は内部昇格というケースがほとんどではないかと思います。外部の人材がチャンスを得られたのは非常に興味深い部分なのではないかと思ったりしています。
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領域で誰よりも成果を出す事でCXOの役職がなくてもリーダー・責任者として見られる

㈱キャスター
取締役CSO
川村尚弘様

2002年12月 University of Oklahoma経済学部卒業
2003年4月 株式会社トーマツコンサルティング入社(現デロイトトーマツコンサルティング合同会社)
2006年6月 株式会社NTTデータ経営研究所入社
2008年4月 フロンティア・マネジメント株式会社入社
2013年6月 株式会社ベルシステム24入社(ベインキャピタル投資先)
2015年6月 同社営業企画部部長就任
2016年3月 同社事業企画部部長就任
2016年11月 株式会社ICI石井スポーツ入社(アドバンテッジパートナーズ投資先) 同社執行役員就任
2019年9月 株式会社キャスター入社
2020年1月 同社執行役員就任
2020年11月 同社取締役就任(CSO/CFO兼務、2022年9月よりCSO)
実際の公開ページでは回答部分が閉じた状態で表示されます。
  • コンサルタントになるため単身渡米・留学

    ― まず上場承認誠におめでとうございます(2023年8月上場承認、10月4日上場。インタビューは2023年9月実施)。承認を受けた際の率直な感想をお聞かせください
    ありがとうございます。ほっとはしています。ただ、すでにかなり前から上場企業にふさわしいガバナンス体制、予算管理、決算体制などは完成されていたと認識しています。むしろ上場準備のプロセスの中でそういった課題を1つ1つ解決していったときのほうが喜びは大きかったかもしれません。45日以内に四半期決算が余裕をもってできる体制になったときの喜びとチームメンバーへの感謝のほうが大きかったです。

    ― 皆さん喜びひとしおという方よりも地道に積み重ねられて最後ほっとされたという感想をされる方が多いですよね(笑)。それでは、ご経歴と自己紹介について確認させてください

    大学卒業後、3社であわせて10年間コンサルティングをしていました。企業再生のプロジェクトに多く関与し、その経験の中で経営管理の基本やデットIR、M&Aなどの知見を学びました。その後、PEファンドの出資先での部長職、経営職を経て、現在キャスターで取締役をしています。

    ― どんな学生時代を過ごされたのでしょうか

    高校生の時は、部活でサッカーをしているか友達と遊んでいるかのどちらかで、学生ならではの自由を満喫していた気がします。勉強は苦手というか、ほとんどしていなかったです。特に英語や歴史などの覚えることの多い科目が苦手で、よく追試を受けていたのを覚えています。逆に、数学は比較的得意でした。1つの方程式だけ覚えればたくさんの問題に答えられるので、私にとっては今風にいうとタイパのよい教科でした。学校の行事でも・イベントでも裏方でマネジメントやプランニングを行うのが得意で、企業の裏方でサポートするという分野に興味を持ちました。そんなときに高校の図書館で「コンサルタントになるには」という本を読み、将来はコンサルになろうと薄っすらと考えていました。その後、アメリカで学ぶ事が将来的にコンサルタントとして活躍するために有効なのではないかと感じアメリカの大学に進みました。

    アメリカの大学では1-2年生のときは英語での授業についていくために必死で勉強しましたが、3-4年生のときには慣れもあって、またあまり勉強しない学生に戻ってしまいました。ただ、この時に会計学を専攻していた(最終的に経済学で卒業していますが、会計学、MIS、経済学を専攻していました)ことから、ビッグ5(当時)会計ファームに入社したいという思いが強くなり、今のキャリアにつながったのかもしれません。コンサルタントになりたい方はマッキンゼーやボスコンを第一志望にする方が多いかもしれませんが、私はこの2社は受けておらずトーマツコンサルティング(現デロイト)が第一志望で、ほかの志望企業も会計系ファームが中心でした。

    ― ご自身の若手時代(20代)で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか。

    トーマツコンサルティングに入社した初日に、パートナーからの入社祝辞があったんですが、その時の言葉は常に意識していますね。若干記憶の改ざんがあるかもしれないですが、

    1.拙速は巧緻に勝る
    2.まず全部作る
    3.自分を個人事業主だと思うこと

    と言われまして、今でもずっと守るようにしてます。

    トーマツでは新卒の同期が15人ほどいたのですが、基礎知識や能力などで私はビハインドしていて入社後の研修はきつかったですね。その後クライアント配属になったあとも最初の1年は、自分の出来が悪すぎたから思い出したくないのか、仕事の記憶がほとんどありません。2年目の途中からは苦手なことはなるべく手を出さず、得意なプロジェクト全体のストーリー作り、分析、ロジックづくりなどにフォーカスするようになって少しコンサルらしくなった気がします。

  • PEファンド投資先とスタートアップベンチャーで感じた違い

    ― PEファンド投資先とスタートアップベンチャーでのマネジメント経験が有られますがマネジメントを務める際どういった違い、魅力があると感じますか
    PEファンドは事業仮説がしっかりしているため遠くにあるゴールを目指すマラソンのような競技、スタートアップベンチャーは日々変わる環境に適応するので短距離走、またはリレー(バトンを渡すのも受け取るのも自分の場合がありますが)のような競技のイメージですね。PEファンドは、事業仮説もイグジットもわかりやすいので達成感を得やすいのと、ファンドのメンバーと壁打ちできるなど、環境面が整っている良さがあります。成果が出しやすい環境が整えられている一方で、時間軸が定められていたり、高いレベルでの論理的・定量的な裏付けを求められたりするので、ポストコンサルの方にとっては普通かもしれませんが、そうでない方にとってはストレスになりうるかもしれません。
    スタートアップベンチャーは、何をおいても成長性の高さと、それによる課題の変化への対応力が問われるところが特徴です。これらをしっかり対応していくことによって、自分の考え方や原理原則を会社に浸透させることができるのが魅力かもしれません。創業メンバーにはかないませんが、少なからず自分のDNAのようなものを会社に残していっている実感はありますね。


    ― ファンド投資先企業を経験されて、現職スタートアップベンチャーを選ばれたご理由と、現職の主な業務内容について確認させてください。
    ファンド投資先はちょっと慣れてきたかなという雰囲気も有ったのと、当時周りも結構スタートアップにいく人も多くなってきたので興味を持ちました。またある種スタートアップに行くというよりもキャスターに行きたいという気持ちが強かったかもしれないです。私は石井スポーツ時代にずっとキャスターのサービスを使っておりサービスとしてすごく付加価値が高いと思っていました。シンプルなんですが、生産性を高めるためにしっかりしたサービスだと感じており、ポテンシャルを感じていました。そこで周囲のポストコンサルの友人に、私がスタートアップに行くことについてどう思うか聞いてみたところ全然合っていると思う、という言葉をもらったのが後押しとなって決めました。
    入社直後は経営企画室長として、KPI管理の土台づくりと、経営課題の発見と解決をしていました。その後CSO/CFOとして管理本部を管掌するようになって、予算策定・管理、資金調達、人事制度の改正などを行い、上場準備の責任者も務めました。私は上場準備に専門性があるわけではなかったため、方針を定めたり、スムーズに進むようなきっかけを作ったりしただけで、あとはメンバーが責任をもって進めてくれました。2022年からはCSO専任となり海外事業、新規事業、M&Aを担っています。

  • 上場準備・達成について

    ― 現職で上場準備を行う中で、最も困難だったことは何だったのでしょうかまた、どのように乗り越えたのでしょうか。

    前述の通り、私が上場準備で果たした役割はさほど大きくはなく、他のメンバー、特に私の後任として管理本部を担ってくれた執行役員陣によって成し遂げられたものだと前置きしたうえでお答えします。

    ひとつは、フルリモートワーク企業での上場ということで前例のない論点がいくつも出てしまったことです。例えば、出退勤管理は通常の会社であればタイムカードとドアの開錠履歴を突合することでダブルチェックできますが、リモートワーカーに開錠履歴は当然ありませんから同じプロセスは作れません。結果として、Slackなどを使って解決したのですが、このような論点が継続的に発生しました。

    ふたつめは、形式と本質の切り分けです。上場の要件として求められるものは、どれも本質的な目的があると認識しています。しかし、それを業務に落とし込むときには、形式的なルールに置き換えなければいけません。例えば、モノを買うときに購買稟議を通す本質的な理由は、しかるべき責任者が、支払先、目的、支払額を承認することで統制を利かせることにあります。ただ、それをルールに落とし込むと「このワークフローシステムを使って、〇〇部が事前にチェックし、最終的に責任者が承認する」という形式に変わります。すると、「ワークフローシステムが止まってしまったらどうする?」「急ぎの場合に〇〇部の担当がいなかったらどうする?」といった話がでたりします。答えは、「メールなどを使って責任者が承認する」で十分本質的な目的は達成できます。

    逆に、責任者が休みなどでいないからと言って、責任者のIDをつかってワークフローに入り別の人が承認してしまったら大問題です。形式的には確かにあってるようにみえますが。このように、本質を理解して、形式にはまらないように議論をコントロールし、そのリズムを作り出すまでは形式に若干振り回されてしまう傾向がありました。

    最後は、やはりステークホルダーとの合意形成です。ここは個別具体論点になりすぎてしまうため詳細なお話はしませんが、コンサルやファンド投資先の経験だけでは補完しきれない部分でした。



    ― 2013年~2019年までベインキャピタル、アドバンテッジパートナーズ投資先で勤務されていますがファンドについてはどういった違いがあると感じましたでしょうか。
    統計的な違いで分かるほどの数ではないので、私が関与した案件や他の投資先メンバーの話などを総合して回答します(狭い世界なので、元同僚だけでも6人ほどがベイン、アドバンテッジの投資先で勤務しています)。
    投資先の企業規模の違いから、PEファンドを通じて採用される経営・マネジメント層の人数が大きく異なりました。念のためお伝えするとPEファンドは、投資したあとで投資先の企業に経営者やマネジメントを新規に採用します。これはよく勘違いされますが、PEファンドに在籍して投資先に出向するのではなく、ほとんどのケースでは投資先に直接雇用されます。そのため、採用プロセスとしてはまずPEファンドで複数回の面談、次に投資先の社長や幹部の方と面談、入社という流れになります。

    ベルシステム24では10名以上このようなプロセスで入社されたマネジメント層がいらっしゃったと思います。一方で、石井スポーツでは私を含めて2名(管理サイド1名、事業サイド1名)だけでした。
    前者では、施策の実施に際して、ガバナンス面でもプロジェクト推進の慣れの面でも、盤石かつスピーディーに進められる利点があります。もちろんプロパーの方々が変革の主役ではあるものの、このような体制は投資時の初期仮説を徹底して進めるのに適したやり方だったと感じます。
    後者では、マネジメント層の大半がプロパー社員となりますので、その方々との合意形成や、施策を推進もその方々が中心になって進めていただく必要がありました。投資時の事業初期仮説も、投資期間中で補正をかけながらすすめましたし、私自身のウィルを反映させる機会が多かったです。またファンド側もかなり業務の細かいところまで入り込んで、現場の人と一緒になって実行していったイメージです。

    前者では、ストラクチャーがしっかりしており仮説をしっかり決めてそれに向かって大きいプロジェクトを3~4年走らせるという印象で、後者の方がスタートアップとまでいかないにしても、より流動的だった印象を持ちます。随時確認しながら仮説を変えていくというところでしょうか。


    ― ファンド投資先で培われた能力はどういったものだったのでしょうか。またもし現職で発揮出来ている点があれば確認させてください
    一歩目を作る能力ですね。コンサルのときは、すでにプロジェクトがクライアントからオーダーされているので、プロジェクトを「やる」ということ自体は決まっていて、スマートに組み立てさえできれば、一歩目の苦労はそこまで大きくないんです。むしろプロジェクトをクロージングすることのほうが難しかったりします。一方で、ファンド投資先ではかなりの量のプロジェクトを走らせないといけないが、そもそも「やる」ということに必ずしも社内合意が取れていなかったりします。一歩目を踏み出す前に時間がどんどん過ぎてってしまうんです。私が好んで使う方法は、まずデータを握ってしまう事。例えばキャスターでは基幹システムのアクセス権をくださいと伝え、拾える数字はすべて拾って、なんだったら1か月ぐらいで誰よりも解像度が高い状態にまでもっていく。最初にシステム担当者と仲良くなり、それによってシステム担当者の人がどういうデータを持っているかがわかるようになり、次にそれを使ってプレゼンする感じです。

    次に、いったん1人でやってしまってある程度の成果を出してしまうやり方です。例えば石井スポーツでは、CRMの導入に向けた最初の一歩は、1店舗のごくごく一部の顧客を使ってエクセルをベースとした仮想CRMの施策をサンプルで走らせたことでした。顧客の整理、DMのデザイン、ギフト券の準備発送、結果の分析などをすべて行って成果が出ることを検証し、次に5店舗、半年後に全店、そしてそれを仕組み化するためにCRMの導入といったところまで進めました。現職でも同様ですね。まずは経営を見える化するために計数を整理するところから始めたのですが、その土台となるDWHを作って全社計数を出せるようにするところまでは外部協力者と社内のIT担当に手伝ってもらったものの、入社後3-4か月で設計、ツール選定、導入、運営開始までほぼ1人プロジェクトとして完結させました。こういう早さはスタートアップベンチャーでは重宝されますし、小さい成果ではあるものの社内での信頼を得るために私にとっては重要なプロジェクトだったと認識しています。


    ― 川村様の今後の展望についてはどういった事を想定されておりますでしょうか。
    あまりキャリアに長期的な展望は持っていません。いまは現職のキャスターで海外事業、新規事業、M&Aの責任を担っていますので、これらが組織的に回るような体制を築き上げることに注力したいと考えています。
  • CXOを目指されている方に

    ― 最後にCXO目指されている方・関心を持たれている方にメッセージをお願いします

    すみません、インタビューの意図に沿えてないかもしれませんが、CXOという役職自体にあまり意味はないです。象徴的に使っているのだと思いますが、最近は「CXOになりたい、役職がほしい」という方が増えていて違和感を覚えています。ある領域において、誰よりも成果を出すことができれば社内ではCXOの役職がなくてもリーダー・責任者として見られますし、そのような状態になればCXOという役職名を欲しいとも思わなくなります。


    では、どうしたら経営レベルで成果が出せるか?という質問に答えるとすると「自分なりの原理原則を持って、それを徹底できるか」ということかと思います。すごく抽象的に聞こえるかもしれませんが、わりと地道・地味な話で、例えば私の場合は、「制度設計をするときは長期的に耐えうる形になっているかどうかを判断基準にする」、「体制づくりはレポートラインをいかにシンプルにするかを重視する」、「業績が良くなったり悪くなったりしたときは、構造的な理由なのか、一過性の理由なのかを切り分けて対応する(つまり一喜一憂しない)」「100点を目指して進まないくらいなら、60点でも前に進んだほうがマシ」などです。これらを持つことによって、瞬間的な判断が可能になりますし、ブレがなくなります。2-3年前に意思決定したことで、すでに記憶にないような話でも、同じ条件を与えられると全く同じプロセスをたどって同じ結論に至ります。
    このような原理原則は、一つ一つの事象に真剣に向き合って必ず自分なりのスタンスを持つことでしか醸成できないので、小さい課題や仕事でも適当に判断しないこと、選択肢を出したり報告するだけでなく常にリスクを取って結論を出すスタンスで仕事をすること、など日々の積み重ねかと思います。そのような小さな積み重ねや、自分なりのスタンスがない状態で「とりあえずCXOのポジションが欲しいんです」というのは少し違う気がしています。

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数字だけにこだわらず課題解消責任者として企業成長を推進することに達成感

株式会社Blueship
CFO
東貴志様

1996年 名古屋市立大学経済学部卒
   同年   個人にてハウスクリーニング業開始
2003年 株式会社リーガルマインド入社 経営企画室
2005年 EY新日本有限責任監査法人入所 
2020年 C Channel株式会社入社 CFOを務める 
2023年 ジャパンシステム株式会社入社(ロングリーチ投資先)
2024年 株式会社Blueship CFO就任(2024年2月時点)
      (直近ロングリーチ社が資本業務提携を行った企業)
実際の公開ページでは回答部分が閉じた状態で表示されます。
  • 希少価値が高く、経営視点を得るため会計士に

    ― どんな学生時代を過ごされたのでしょうか
    ダメダメな学生でしたね。最近の学生の皆さんは意識も高くしっかり勉強されたり、インターンなどやられていますが、私の大学時代は、のんびりしたものでした。バイトとクラブ活動に明け暮れる毎日でした。
    4年間継続したものがマンドリンです。比較的マイナーな楽器ですが、オーケストラに入るのは敷居が高すぎてダメだけど、マンドリンなら大学デビューでも行けるのではと思い入りました。この直感が当たり4年間唯一継続できた趣味です。


    ― 大学を卒業されて、ハウスクリーニング業をはじめられたきっかけ、またその後会計士資格を取得されたご理由について

    自分らしさとは?みたいな疑問をたまたま持ってしまったのが、大学生後半だったのが大きいですね。普通に就活をして、内定をもらいそのまま就職というコースに乗っていたのですが、このままではいけないみたいな気持ちが沸々と湧いてきて、自分でビジネスを展開したいと考えました。ハウスクリーニング業だったのは、親族が不動産関連の仕事をしていたので親和性のあるビジネスを展開すれば苦労は少ないだろうという考えで始めました。
    数年たってビジネス成長が限定的であったこともあり、一度勉強が必要と考えました。当時の選択肢としては、MBA取得もしくは資格取得が浮かび、まだ希少価値の高い資格取得を選択しました。その際、子供のころから漠然となりたいと思っていた弁護士にするか、大学時代に知った公認会計士にするかという選択がありましたが、取得可能性と経営視点を得るためには、公認会計士の方が望ましいだろうと思って取得に至ります。


    ― ご自身の若手時代で特に印象的だった経験、意識されてきた点はどういった事だったのでしょうか

    元々が起業から始まっているという経歴なので、いわゆる若手時代は社内に先輩などもおらず、会社をいかにスケールさせるかしか考えていませんでした。今振り返っても、若さゆえの貴重なチャレンジであったなと思います。

    逆にサラリーマンとなるのは、会計士資格を取得してからで、同期は新卒世代のメンバーで、年齢ギャップがありました。でも起業するための公認会計士であったので、あまり気にすることもなかったですし、短期間で離れるだろうなと考えていました。
    結果としては、EYでの在籍期間が15年ほどと、当初の思惑とは大きく外れたところは、予想外でした。理由としては、毎年経験する仕事も何かしら変化があり、成長実感を持てたので、やめるという気持ちが徐々に薄れてきたのがあります。チームで仕事をしていたので、つながりを実感してきたところもありました。
    話がそれましたが、若手の時は自分の武器=経験を持つことだけに集中していました。私の場合は、それが資格取得であり、業務を通してのスペシャリストとしての経験でした。

  • 圧倒的スピード感に魅力を感じベンチャーの世界に

    ― 監査法人から様々な企業がある中でC Channel社を選ばれたご理由について
    私の人生の選択はいつもタイミングとご縁で、流れに身を任せています。自分の選択を正解とするための努力をすれば良いと割り切っているので、思いがけない経験をできることも多いです。
    C Channelを選択した理由は、圧倒的なスピード感のある会社であったと実感したからです。当時、複数の会社のオファーを頂いておりましたが、面談から採用までのスピード感が桁外れで会社の意思決定スピードも早くてダイナミックな動きを期待して入社しました。具体的なエピソードとして、私の採用決定まで4時間程でした。15時にCFOの方と会って気に入って頂いたらしく、他の執行役員の方、社長と面談し当日中にオファーが出ました。急に社長と面談っていうのもなかなかないのでエージェントの方もビックリされていました。
    その場にいると自然に受け入れてしまって早さを実感することもなかったですが、今振り返ってみると実際にその意思決定スピードは早かったですね。私自身も、入社時の役割は経理部長でしたが、その半年後には経営企画本部全体に関する取締役になり、1年後にCFOになり、2年経ったころには常務取締役CFOにまでなっていました。
    様々な方との出会いも刺激的で、入社時のCFOは外国籍の方で、彼の考え方の影響を結構受けました。とことん合理的で情熱と冷静さを併せ持った素晴らしい方でした。
    私は比較的冷静さが際立っているところがあるので、必要に応じて情熱を前面に出すなど求められる役割を全うすることを今でも心がけています。
    もちろん、C Channelの森川社長ともかけがえのない時間を共有させてもらいましたので、感謝しかないです。挑戦にかける情熱は圧倒的で、私も挑戦か見送るか悩んだときは、まず挑戦するためにはどうすべきかといった視点で物事を見るように意識するようにしています。
    まさに運命の巡り合わせで入った会社でしたが、多くの出会い、幅広な経験をさせてもらって一気に成長できた数年間でした。


    ― C Channel社でのスピード昇格された要因・評価されたポイントはどういったところだったのでしょうか
    社長との相性の部分もあったのではないかと思います。話す中で何かひらめくものがあったというか、事業ビジョンがうまくはまり、それに向けて明確に役割分担が出来たという事でしょうか。また早さと結果・実行という部分も評価されたのではないかと思います。
  • ロングリーチ投資先での主な業務・PMIについて

    ― 現在Blueship社のCFOを務められていますが、主な業務内容についてお聞かせください

    入社タイミングが、9月で決算期変更も実施したこともあり、12月までの4か月間でPMIの遂行とレポートラインの円滑な運用が主な業務となります。今までオーナー企業として素晴らしい成長を遂げている会社ではありますが、ここから組織の力を結集することで、非連続な成長を実現することが求められています。PMIは一旦区切りがついたので、さらなる成長実現のための組織体制の構築や管理の高度化、グループ会社であるジャパンシステムとのシナジーの発揮が現在の業務内容となります。

    お陰様で必要条件はそろっています。ファンドからの出資の少し後にServiceNow社からアメリカ以外で初出資を受けた会社となり、世界でも指折りの企業から評価されているBlueshipには成長しか似合わないです。
    関係者の期待をエネルギーに変えて、走り続けたいですね。



    ― 投資先に入られてからの社員の方との関係構築やコミュニケーションを取る際に工夫された点はありますか
    自分から積極的に動くことを心がけています。実際、社員は良くわらかない人が急に来たなと思うでしょう。社内の空気を把握するために、少なくとも情報が集まっているキーマンの方を見つけて、こちらから自然にコンタクトを取っていくというのはあったのかなと思います。


    ― 現在業務を進める中で特に心がけている事はどういったことでしょうか
    全ては会社成長のために、しっかりと経営者としての役割を果たすことです。今までがオーナー企業であったこともあり、社長一任に近いところも少なからずありました。これはスピード感という点では最大のメリットを生みますが、ガバナンスという観点からは懸念も生じます。外部株主からの出資を受けた会社として適切なレベルでのガバナンスを利かせることは必須ですし、私の業務としてもこの意識を常に持ち続ける必要があります。その際のガバナンスの利かせ方ひとつとっても、経営として会社の成長に寄与するためにはどのような要素が必要かという考え方を常にしています。
    メンバーに丁寧に伝達することも意識しています。せっかく素晴らしい仕組みを構築できたとしても運用が不十分だと効果は限定的となってしまうので、デリバリは伝えきるまでやるということもこだわり続けています。


    ― PMIについて意識されていることはどんなことでしょうか
     また、ロングリーチビジネスパートナーズ社(LBP)※1について感じられた事はありますか

    PMIで一番意識することは、一体感と納得感です。
    私自身は会計士としての立場からPMI業務を実施することが多々ありますが、当事者としてPMIを実施する機会は多くありませんでした。しかも今回のPMIは、ゆるやかな企業体として機能させることが区切りになるので、通り一辺倒ではいけないし、グループ会社とあまりに相違するレベルでもいけないという目線を意識して構築することが求められましたので、難度高めだったなと感じます。最終的には個社ごとの特性を生かしつつも、一体感を持たせつつという点がポイントでした。
    あとは、ルール変更することで、どのような変化があるのか、なぜ実施する必要があるのかという点をメンバーにきっちりと説明することが必要だなと感じています。納得しないとメンバーも動き出せないので、丁寧にやっています。
    LBPについて、彼らはほんとに痒い所に手が届くというか、非常に戦力になって頂いています。気になったらすぐにサポートしてくれ、オペレーション寄りの事も含め一緒に課題解決するので、1週間に2~3回はお話する感じです。

    ― PMIでの個社ごとの個性を生かしつつも、一体感を持たせる際の落としどころはどのように決められていたのでしょうか
    ゴールとして何をやりたいか、それを会社に当てはめるとどうかという議論を絶えずメンバーとするようにしています。当初のイメージと相違していた点として、要件定義し、メンバーが納得すると走り切れるところは当社の強みであると感じています。

    ― PEファンド投資先とスタートアップベンチャーでのマネジメント経験が有られますがマネジメントを務める際どういった違い、魅力があると感じますか
    事前に想定していたよりも大きな違いがありました。PEファンド投資先では、一定のルールはすでにあり、そのルールの中でいかに効率よく事業成長させていくかという視点での会話が多くあるかなと感じています。
    一方で、スタートアップベンチャーではルールを変更させることも厭わず、会社を効率というより最大限成長させるという力点の置かれ方があるかなと感じました。
    CFOとしての役割もその特徴に応じて使い分けが必要です。投資ファンド傘下では、事業の整理も含め与えられた資源をいかに有効に活用していくかというところに力点が置かれています。スタートアップベンチャーでは不足あれば自ら調達してきて充足させるという発想になります。ここだけ取り上げるとダイナミックな動きを求められるのがスタートアップで、精緻な動きを求められるのが、ファンド投資先といった感じになります。ただ、私がジョインしているBlueshipが面白いのは、ファンド投資先であるのですが、スタートアップとしての要素を色濃く残すところです。なので、効率も考慮しつつも、爆発的な成長をするための仕掛けを常に考える必要があります。この絶妙なバランスを舵取っていくことは実に刺激的ですし、楽しいです。
    あとは、株主であるファンドメンバーとのコミュニケーション量に圧倒的に相違があります。ガバナンス機能自体はファンドメンバーがにらみを利かせてくれ、自分の感覚と違うアクセル、ブレーキを体感でき、その軸も取り入れることも勉強にもなります。

    ― 初めてのPEファンド(ロングリーチ社)投資先企業となりますが、苦労された点とどのようにそれを乗り越えられようとされていますか
    正直苦労したなと思う所はないですね。といってしまうと終わってしまうので掘り下げなければいけませんが、私の感覚と合う会社であったことが、ストレスなく入れた要員です。特に、ジャパンシステムとBlueshipの両社長との距離感をすぐに詰められたことが大きいですね。「会社のためにやるべきことをやります」宣言を受け止めてもらっています。
    業務自体は当然不慣れなことが多いですが、それをいかに楽しめるかは重要な要素だと思います。私はよく採用面談で候補者の方に、この環境を楽しんでねと結びの言葉を伝えることが多いですが、私自身も楽しむための努力は怠りません。まずは、自分の意見をしっかり伝え、相手の意見もしっかり聞くところから始めます。事実と希望・考えを明確に区分し、正しく状況を理解して、そこから最善の打ち手を考えていくことで乗り越えました。当然、短期的な対処と中長期的な抜本的改善は異なりますので、そのあたりも意識して、過度に最初からこだわり過ぎないのも大事ではないかと思います。
    前年までは、会社の現状を生かして対応してきましたが、これからは会社のさらなる成長のための仕組み作りや組織作りは、困難なことも多いでしょうし、やりがいもそれ以上にありそうなので楽しみにしています。

    ― 率直にロングリーチ社についてはどういった印象を持たれましたか
    非常に紳士的なファンドであり、一緒に投資先企業を成長させようという強い意志を感じました。彼らの投資スタンスが比較的長期であることも背景にはあると思いますが、大きな成長を実現するためのパートナーとしては良い組み合わせだと確信しています。
    担当されているファンドメンバーのいずれとコミュニケーションをとっても合理的な反応が返ってくるので、業務も進めやすいです。

    ― ファンド側からはどのような支援を受けられており、どういったメリットがあると感じられますか
    私自身がファンド傘下の投資先への関与が初めてでしたので、お作法すべて支援を受けています。彼らの後ろにいるLPの存在であったり、彼らの立ち位置であったりなどは、実際に触れ合わなければ正直知ることはなかったなと思います。当然の話になりますが、単独株主のため彼らとの期待値擦り合わせはやりやすいです。

    ― 東様の今後の展望についてはどういった事を想定されていらっしゃいますか
    まずは、今の案件を無事エグジットまで導くことが最低限の責務ですので、そこをしっかりやり切ることを意識しています。当然ですが、会社はファンドのエグジットというイベントはあるものの、それとは関係なく成長し続けることが必要ですので、そのための基礎をどれだけ植えつけられるかを意識しています。私自身も新規事業の立ち上げと成長というミッションを持っているので、注力して楽しんでいきたいですね。稼ぐCFOは自分の理想像の一側面なので、実現させていきます。
    別軸ですと、私自身の個人事業として、スタートアップを中心にCFO業務をパートタイムで提供するサービスを展開していますので、そちらも積極的に活動していきたいと考えています。お陰様でEYでの経験や経営者としての経験を自分なりに棚卸してみると、組織運営に必要なことはすべて網羅できていますので、多くの会社に価値を還元できると自負しています。社長の壁打ち相手、右腕として組織成長にコミットして機能する役割を多くの会社と実現したいです。
    日本パートナーCFO協会※2という団体に属しており、同期の仲間のネットワークを駆使すれば全国のあらゆる会社の課題解決ができるので、「なんだそれ?」と思った方は是非、SNSでご連絡ください!

  • CXOを目指されている方に

    ― CFOになるにはどういったキャリア・スキルを身に着けておく必要があると感じられますか
    あまり偉そうに言えませんが、少なくともスタートアップで言うところのCFOに求められているのは、なんでも拾う人かと思っています。組織を作ることが非常に大事な役割なので、何事も積極的に拾える人はぜひスタートアップで経験を積んで、CFOを目指して頂くと相性良いと思っています。
    また足りないものを補える・勉強したりすることの好奇心であったり、ネットワークですかね。ちょうど一昨日くらいに知り合いのCFOが横のつながり作りましょうとSlackが立ち上がって今20名くらい集まっています。領域が広く難しくなっていくので、一人でわかるなんて言えないんですよね。そうやって相談できる環境を築ければ成功間違いなしかと思います。


    ― 最後にCFO目指されている方やファンド投資先に関心を持たれている方にメッセージをお願いします

    私自身は経歴のところでお話しした通り、気づいたらCFOというキャリアに到達したという感覚です。日々の業務で一生懸命にやり続けることで、最短距離で経営者の一人としての経験を得ることができました。これは私にとっては大きな転機で、皆さんにもぜひ実感してもらいたいです。
    経験する前後では、視座の持ち方など大きく変わりました。何よりも勉強する領域、割く時間の意識が全く変わりました。人生で一番書物を読んだり、交流を図ったりなど貪欲に色々なことを吸収したいと思える自分にも出会えました。
    そういう意味では、まだまだ勉強中のCFOという段階ではありますが、皆さんに一言申し上げるとすると、自身のCFO像はどのようなものかを具現化しておくとよいかと思います。
    CFOの方と話す機会も増えてきましたが、いろいろなCFOがいるなと感じます。CFOの役割は一定の型があるものの、自分の意識次第で大きく変化します。私自身は比較的幅広にやりたい性格なので、数字だけにこだわらず課題解消責任者として企業成長を推進できれば非常に達成感を持っています。この記事を読んでくれた方は是非、ご自身の理想とするCFO像を描いてもらって、それに向けての自分なりの経験を着実に積んでいただければと思います。色々な道があってよいですし、どの道でも経験値はたまります。


    ※1.LBP(ロングリーチビジネスパートナーズ)
     2023年に設立されたロングリーチグループ内の常駐型バリューアップ実行支援コンサルティング会社。
     投資案件のPMIの効率性及びクオリティーの向上やバリュークリエーションの再現性を高める。
    ※2.日本パートナーCFO協会
     中小ベンチャー企業での社外No.2、パートナーCFOを広く一般に普及することを目的として、認定・教育・普及・紹介活動を行う一般社団法人。
     https://p-cfo.or.jp/

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