プロCFOへの道
Professional CFO Column

Profile

大学卒業後、一部上場企業での管理部門(人事・財務経理・経営企画)での業務経験後、PEファンドの投資先への派遣人材として製造業・小売・サービス業でのCFO等を歴任。 PEファンドのバリューアップ担当、会計系コンサルでのPEファンド投資先への改革支援など、PEファンド内外の両方の立場での業務経験を有する。

PEファンド投資先CFOへの道

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  • 【第1回】PEファンドは候補者の何を見てリクルートするのか

    これから数回に分けてPEファンドの投資先CFOの実態をご紹介していきます。 私自身が20年以上実際に経験してきたことをご紹介していきますのでよろしくお願いいたします。

    ― 1. PEファンドとは
    そもそもPEファンドとはどんなことを生業にしているのかから、確認していきたいと思います。私自身、金融機関やコンサルティングファームに勤務している知人はさておき、そのほかの業界の知人には説明に苦労しました。

    ・何をやっているのか
    PEファンドは機関投資家から必要な時に資金を供出してもらい、非公開株に投資し当該企業の企業価値を高めて(バリューアップ)、売却(エグジット)することで利益を上げます。そしてその上がった収益を、投資してもらった機関投資家に還元することを業務としています。一般的には10年の期間の前半5年を投資期間、残りの5年を回収期間とすることが多いように思います。 また、投資の際には機関投資家から預かった資金だけではなく、投資先企業の収益を返済原資とするLBO(Leverage Buy Out)ローンを使って投資効率を上げるのが一般的です。

    ・ここからわかること
    このような生業ですので、①全く縁のなかった会社に入り込んで、②その企業の成長促進や不採算事業の整理を行うことで利益を上げ、③比較的短い期間でIPOや事業会社への売却を行うことが求められます。こういう背景から、投資先企業に送り込む人材(CEOやCFO、CSO、CHROなどCXO人材と呼ばれます)に求められるスキルや知見はある程度、想定することができます。


    ― 2. 採用の窓口
    ではPEファンドではどうやって投資先への派遣人材を探しているのでしょう。現在は1990年代後半のようにファンドが珍しかった時代と異なり、転職もM&Aも一般的になり、特別なルートはないと思っていただいてよいと思います。

    ・エージェント経由での採用
    PEファンドのサイズにもよりますが、ニュースでも取り上げられるような欧米系のファンドでは日々、投資先のバリューアップを行うための人材を探しているといっても過言ではありません。ファンド規模が大きい場合、毎年いくつもの投資を行っているため、常に人が不足している感覚を持っています。そのため、大手リクルートエージェントにはPEファンドをカバーしている担当と週に一度、ミーティングを行っている例もあります。 エージェント側も候補となりうる人物を常に探しており、私にも10年来、定期的に情報交換させていただいている方がいます。

    ・PEファンド独自のネットワークでの採用
    ファンドの中にも投資先企業のバリューアップを主に行う社員がおり、非常勤取締役・監査役などの役職で取締役会・経営会議の時だけ監視を行うパートナークラスとは別に、ジュニア・ミドル層で日々、投資先の会議に参加しながら事業の意思決定にかかわっている方が一定数います。バリューアップチームの面々はコンサルティングファームや事業会社の経営企画・財務経理等の業務経験を持ち、前職での同僚や取引先のネットワークがあります。特にコンサルティングファームでは案件ごとにチームアップして支援先に入り込みますので、ファーム内のネットワークだけでなく、支援先の社員の方々と一定期間、濃密なコミュニケーションをとる場合もあり、このネットワークでも人をリクルートします。

    ― 3. 候補者の何を見ているのか
    では、PEファンドの採用担当は候補者の何を見ているのでしょうか。投資先ごとに状況が異なるため、個別の事象ではそれぞれの比重がことなると思いますが、私は選ばれるときは次のような項目を重視されてきたと感じますし、少なくとも自身が選ぶときはこの観点から候補者を見てきました。

    ・時間感覚
    前述の通り、PEファンドは早ければ3年、長くても5年をめどに投資先のバリューアップを行い、エグジットをして利益を確定させなければなりません。そのためこの時間軸で成果を上げるという時間感覚を共有できるかどうか、が重視されます。着手してすぐ効果が出るようなわかりやすい施策が転がっていれば、そもそも対象の事業会社がやって成果を出しているものです。事業の意思決定は10回中、9回は成果が出ないとも言われ、そんな難しい仕事を短時間で、かつ成果をだすということにチャレンジできる人間かどうかを面接官は見ています。

    ・人間性
    そもそも頭脳明晰、ロジカルなPEファンドの社員と事業会社の(特に現場で作業をしているような)社員とは、普通は出会うことがない人たちです。ファンドから送り込まれるCXOは異世界の住人たちそれぞれの言葉を理解し、時には翻訳して伝えながら、成果を上げるための変革を起こしていく必要があります。 投資先の社風にもよりますが、従来やってきたことを「変化」させていく必要があるため、CXOであるというポジションから下に指示を出しても、だいたい変化は起きません。現場側に「どのように変化すればよいかわからない」のはましな方で、そもそも「外から来た人間に自分たち以上にうまくできるはずがない」、「自分たちの業界はほかの業界と違う」と思われることのほうが多いです。 このような状況で、ファンドの時間軸に合わせた変化を起こすには、スキル・知見の前に投資先の社員に受け入れられる人間性 が求められます。 派遣される企業によって様々ですが、私が最初の派遣先に一緒に派遣されたCEOに言われたアドバイスは「現場に降りていき、話を良く聞くことは大事。ただ、同類として与しやすいと思われてはいけない」というものでした。 私はこの言葉を、次のように解釈しています。「他者の経験・考えは真摯に聞き、敬うという、人として当たり前のことをする。ポジションで命令することで人を動かそうとするのではなく、相手が受け入れやすいロジック・話しぶりで納得してもらって自分事として動いてもらう。そのためには人によって態度や発言を変えてはならないし、謙虚な姿勢でいることが大事」であると。

    ・スキル・知見
    以上のような人間力の後にスキル・知見が評価されるわけですが、CFOに求められるスキル・知見とはどのようなものでしょうか。一般的なCFOに求められるスキル・知見と大きくことなることはありませんが、PEファンドの投資先CFOに特に求められるものとしては次のようなものがあげられます。

    ① シミュレーションモデル(財務三表モデル)
    PEファンドでは投資時にCFまでを含めたモデルを作り、銀行にも計画(バンクケース)を提示しながら、ローンを引き出し投資します。PLだけではなくCFについて対象会社の傾向をつかみ、中期の見立てを議論できれば、安心して任せられると感じるでしょう。
    ② LBOローンに関する知見
    低金利時代が長く続き、金融機関は利幅の大きい積極的にLBOローンに取り組んでいます。LBOローンには様々なコベナンツ(財務制限条項)がつけられています。財務諸表で計算される利益・キャッシュを元に計算される利益指標・キャッシュ水準や、設備投資制限などです。コベナンツのコンセプトを理解しており、チェックできる体制や報告フォームを銀行と交渉しながら確定することができるCFOは重宝がられます。この点は意外と重要で、あまり情報を開示したくないファンドとできるだけ情報を知りたい金融機関は、情報開示の面では利益が相反します 。よってファンドの意向を理解しながら金融機関側ご理解いただけるロジックで情報開示を制限しつつ、金融機関とも良好な関係を維持することが必要となります。
    ③ ファンド特有の報告内容への対応力
    ファンドは投資家である機関投資家へ定期的に報告を行っています。またグローバルファンドであれば、グローバルもしくはエリアHQからの指示で突発的な報告を行う場面が出てきます。これら定型・非定型の報告の必要性を理解し、被報告者が納得するスピード感、報告数値の取りまとめ力を想起できる経験は面接官に好印象でしょう。
    ④ 監査対応と交渉力
    投資期間中は機関投資家の要求もあり、会計監査の受診は必須となります。会計監査は基準が決められているとはいえ、機械的に決まるものはまれであり、会社のポジションをいかに監査人に納得してもらい、監査意見をだしてもらう能力は、どの企業のCFOにも共通するスキルセットです。 ただ、会計原則の枠組みの中で、PEファンドが重視するCashベースの利益(EBITDA:償却前営業利益)に貢献する実務処理を監査法人と交渉することはPEファンドの投資先CFOに特有のスキルと言えます。

    なお、選考最終フェーズでリファレンスチェックが行われる場合があります。はっきりと不足点をお話しいただける場合は少ない前提で、私自身が選考時に確認していた点は、応募者がどのように「見られていたのか」が中心だったかと思います。 具体的にはご本人が説明されていた経歴・実績を、他の方々はどのように評価されていたのか、仕事を変わられた際の経緯・ふるまいはどうだったかなどです。人間性に問題がなくとも、チーム内の関係性により全体のパフォーマンスに影響が出ることは往々にして起こりうることだからです。

    次回はCFOとして採用、派遣された後の立ち上がり期の業務についてご紹介したいと思います。

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